東北の夏を代表する祭りとして、海外にもファンの多い「青森ねぶた祭」。他の数多くの祭りと同様にコロナ禍で2年間は中止、昨年は縮小開催を余儀なくされましたが、今年2023年はコロナ禍前の規模で開催されます!
大型ねぶたの運行は昨年の17台から23台へ。例年22台のところ今年はさらに1台増え、勇壮なねぶたの曳き回しをたっぷりと堪能できそうです 。ねぶた祭に華を添える跳人(ハネト)たちも昨年は事前登録制でしたが、今年は以前のように誰でも自由に参加できるスタイルに戻り、賑わいと熱狂が戻ってきます。
ここからは、昨年3年ぶりの開催となった青森ねぶた祭を、現地の空気感とともにお伝えしたリアルな速報レポートをお届けします。
待ちわびた4年ぶりの通常開催を迎える過程に、昨年、入念な感染症対策を施し、安全安心に無事に開催された実績と、地元の皆さんの思いがあったことをぜひこの記事で感じてみてください。きっと、今年の青森ねぶた祭の感動もひとしおになりますよ。
感染症対策を徹底して3年ぶりのねぶた祭!
2022年8月2日、日本有数の火祭りであり、東北三大祭りの一つにも数えられる「青森ねぶた祭」が開幕しました(7日まで開催)。コロナ禍で3年ぶりの開催となった青森ねぶた祭。お祭り期間は7日までですが、今回の記事では3年ぶりの開催となった初日(8月2日)の町の雰囲気や、新型コロナウイルス感染症対策でどのような点が変わったか、実際にハネト(跳人。ねぶたの周りで花笠や浴衣などの衣装を着て跳ねている人)としてお祭りに参加した生の視点からレポートをお届けしたいと思います!
青森に到着! まずは駅周辺を散策してみる
祭り初日となる2日朝、青森ねぶた祭の舞台となる青森市中心街への玄関口「青森駅」に到着しました! 例年であれば1日にも「前夜祭」が開催されるのですがコロナ対策で今年は中止となりました。
天気はあいにくの曇り模様、天気予報を見るとなんとか夜までは持ち堪えてくれそうですが…….。ところで、青森ねぶた好きの筆者も、この場所を訪れるのは2018年以来。まず最初に驚いたのが、駅があったはずの場所が更地になってしまっていたこと!
案内板を見ると、駅舎の跡地にホテルや商業施設が入る新しい駅ビルを作るようです(2024年度完成)。青森駅前の風景も変わっていきそうですね。
平日の朝10時ということもあり、さすがにまだ観光客は町の中にいない様子。とりあえず時間まで町中をぐるりと巡ってみたいと思います。
海のすぐ近くにある青森駅。観光で訪れたなら、まず海沿いを歩いてみるのもいいかもしれません。
駅沿いの遊歩道を歩いていくと、数分で青い海公園に到着します。ここにはねぶたの制作小屋が立ち並ぶねぶた団地(ねぶたラッセランド)があります。朝早いので、やはりここの人出もまだまばら。
ラッセランドに隣接するのが三角形のシルエットが特徴的すぎる「青森県観光物産館アスパム」。その名前の通り、青森物産の販売や飲食スペースもあります。施設内の「青い森ホール」では、360°3Dデジタル映像シアターで、迫力の映像を通じて青森の魅力を体感できるそうです。
続いては、実際にねぶたが運行される市街中心地部を歩いてみましょう。
ねぶたの運行ルートを歩きつつ少し観光
ねぶた運行ルートの一つでもある「新町通り」。アーケードの商店街にさまざまなお店が立ち並びます。
気になったのは、アーケードに連なるように飾られている七夕飾りのようなもの。
案内板によると「青森ねぶた祭」に願いを込めて、青森市立造道中学校美術部の生徒さんが制作したそうです。ねぶたの起源が七夕祭りであるという話をあらためて思い出させてくれるいいプロジェクトですね。
町中のどこを歩いていても、ねぶたのデザインが現れます。「隠れミッキー」みたいな感覚で、探してみるのも面白いかもしれません。
ねぶた祭の期間、町中ではさまざまな店舗の店頭でねぶたグッズが販売されています。もちろんハネトの衣装も。今回は感染症対策の観点から、抽選制で事前に登録しているハネトしか参加ができない仕組みとなっていますが、通常時では誰もがハネトの衣装を着て飛び入りで祭りに参加することができます。
ハネトでなくとも鈴だけ購入して服につけ、ねぶたを鑑賞すれば、それだけでより一層お祭り気分を高めることができます。
おすすめのお店は「さくら野百貨店 青森店」です。とにかく品数豊富でハネトの衣装だけでなく、Tシャツや日用品系のねぶたグッズも多数取り揃えています。
ちなみに筆者の実感として、例年よりも少しねぶた販売をするお店が減っているように感じました。
運行コースの要所要所に椅子席が設けられています。青森ねぶた祭公式ホームページによると、
・国道の有料観覧席は車道を利用して南北1車線ずつにイス席を設置します。
・国道歩道には有料観覧席を設置せず立ち見スペースや歩行者通路として使用することで、会場の全体的な混雑を緩和します。
・八甲通り、新町・本町通り、平和公園通りの一部には有料観覧席を従来通り歩道に設置します。
と、されています。
観客席の配置においても、人が密にならないような対策がなされているようです。
せっかくねぶた祭に遊びに来たのなら、新町通りを少し歩いた先にある善知鳥神社(うとうじんじゃ)に立ち寄ってもいいかもしれません。
旧県社・奥州陸奥国外ヶ浜総鎮守・青森総鎮守・青森市発祥の地とされるこの神社。かつて青森ねぶた祭の由来として紹介されていた「田村麻呂伝説」(山に隠れて対抗する蝦夷に対し、山からおびき出すために、灯火や笛・太鼓を用いて、面白おかしくはしゃぎ回り、蝦夷が物珍しさで、山から出てきたところを、一網打尽に生け捕ったことがねぶた祭の起こりとする説)ですが、この神社もまた田村麻呂とのゆかりが深いため、ねぶた祭との遠からぬ縁を感じることのできる場所です。
さて、そろそろお昼が近づいてきたので腹ごしらえをしましょう。青森といえば海産が有名ですが、筆者がおすすめしたいのは駅前の「お食事処 おさない」です。
昔ながらのレトロな雰囲気が漂う食堂ですが、味もバツグン。青森ではトップクラスの漁獲量を誇る「ホタテ」料理が名物です。
海鮮を存分に味わいたいなら「のっけ丼」ができるお店もおすすめです。
「のっけ丼」とは、白ごはんの入った器を片手に、市場を巡りながら、それぞれのお店で買ったお好きな具材をごはんに乗っけて、オリジナルの海鮮丼を作るグルメ。作った海鮮丼は市場内の飲食スペースでそのまま食べることができます。海鮮を思う存分食べたいという方は「のっけ丼」のお店に行ってみましょう。
3年ぶりのねぶた祭、いよいよ運行開始!
夕方近くとなり、ようやく通りにも人通りが増えてきました。
やはり例年よりも人は少なく感じますが、ねぶたのお囃子が鳴り始めると、いやが上にも気分は高まっていきます。
ハネトはこれまでの「誰でも自由に参加できる」スタイルとは違い、事前登録制です。抽選に当選した人にはQRコードが送られてくるので。それをもって運行コース内にある「ハネト受付所」に向かいます。ちなみに各団体ごとに人数制限があり(30〜80人ほど)、かつ一般参加を受け付けてない団体(関係者のみ)もあります。実際にはハネトの数が少なく感じる団体もあったので、当選したけどコロナの状況を見て来てない、という人も多かったかもしれません。
手続きが終わったら所定の待機スペースに集まり、自分のいる団体の出発を待ちます。団体によって出発時間が変わるので集合時間も異なります。また団体ごとに定められた独自ルールもあるので、事前チェックが不可欠です(花笠着用の有無など)
早速、運行がスタートしました。周りには「この日を待っていた!」というばかりに気合の入ったハネトたちが一斉に跳ねはじめます。何より、大地に轟くようなねぶた囃子を聞いてしまうと、体を動かさずにはいられません! この血湧き肉躍る感覚は、本当に現地で跳ねてみないとわからないかもしれません……。
といっても、みなさん3年ぶりの「ハネト」ということで、バテるのも早い……(笑)。団体によってハネトたちの気質も変わってくるところだと思いますが、まずは初日ということもあり、みなさん跳ねられる喜びを噛み締めたり、久々のねぶたの雰囲気に体を慣らしているという感じでした。
沿道のみなさんももちろん、大盛り上がり! 巨大なねぶたが上下左右に大きく動くたびに、歓声が上がりました。ねぶた囃子に合わせて手拍子をする方々も。その動きに鼓舞されて、疲れたハネトたちも再び跳ねはじめます。
3年ぶりのハネトは筆者もまた同じなのですが、やはり楽しい。そしてすぐに疲れる……。コロナ禍ですが、規定では「運行中、ハネトによるラッセラー等の掛け声や発声はマスク着用時のみ可能とします。」とされていたので、大きな声で「ラッセーラ」を叫び始めると、コール&レスポンスがハネトたちの間で巻き起こり、体に力がみなぎってきて、また跳ねられるようになります。「ラッセーラ」の効果はすごい!
90分ほど跳ねて、私のいた団体は運行を終了。その後は、後から続いてやってくる各団体の勇姿を沿道から応援していました。途中から小雨が降り出したものの、跳ねてほてった体が冷やされて、むしろ好都合なぐらいでした。
祭りの凄みを感じた濃厚な時間
2022年青森ねぶた祭、初日を体験してみて率直に感じたことは、まずこれだけの大規模な祭りの中、できる限りの感染症対策が施されているなという印象でした。ルールを大きく逸脱する人も少なく、ともかくコロナ禍の中でお祭りができるという喜びを、まず噛み締めようという雰囲気に満ちていました。
そしてやはり「新型コロナウイルス感染症対策」によって、お祭りとしてのスケールはややコンパクトなっているように感じました。ハネトの人数の多さ、熱気、沿道にあふれかえる人々、これは7日までのねぶた期間の中で徐々に戻ってくるところもあるかもしれませんが、やはりコロナ禍で「安心安全に楽しめる」ことを優先しているため、例年よりも落ち着いている部分は少し感じられます。しかし、パワフルなお囃子、美しくも迫力あるねぶたの数々、ハネト一人ひとりの気概、お客さんたちの笑顔、そういったものを見ると、本当にこの祭りが帰って来たんだという熱い思いと、やっぱりこのエネルギッシュな祭りを生み出した地元民たちへの敬意があふれ出てきます。
実はハネトの衣装に着替えて青森駅の前を歩いていた時、津軽弁のマダムに声を掛けられました。どうやら私の衣装が少し着崩れていたようで「こうやって着るんだよ」と本場仕込みの正しい着付けをレクチャーしてくださいました。「3年ぶりだから楽しみでね♪」といいながら、その場を去っていった女性。地元にもやはりねぶた祭を待望している方は多いようです。
ねぶた祭はまだまだこれから! 最終日には花火大会もあります。みなさんもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。