6月1日は\鮎の日/ <゜)))彡
鮎は夏の季語ですし、禁漁期が明けていよいよ美味しい旬の時期を迎えますね。
ところで、「鮎」という字は「魚」偏に「占」うと書きますが何故なんでしょう?オマツリジャパン編集部でも、誰も由来が分からなかったのでちょっと調べてみました。
すると、ある神様の伝説に行き当たり、それが有名な祭りとお菓子に繋がって…と、鮎にまつわる色々な話題が数珠つなぎに出てきました。
そこでこの記事では、実は古から現代まで私たちに身近な存在であり続けている「鮎」にまつわる話をご紹介します!
なぜ6月1日が「鮎の日」に?
字の謎を解く前に、まずは「鮎の日」について。鮎の日は、和歌山市に本部がある全国鮎養殖漁業組合連合会が、日本固有の魚といえる鮎の美味しさをより広く知ってほしいと制定した記念日です。
水質が綺麗な川にしか住まないとされる鮎。上品で淡泊な味わいから「清流の女王」とも呼ばれ、川の岩についた藻を餌とし独特な香りがするので「香魚」と書くことも。昔から本格的な旬を迎えるのが6月とされていることから、6月1日が鮎の日になりました。
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また、鮎釣りの解禁日を6月1日としている地域も多く、鮎の販売をスタートする小売店も多いのがこの頃。毎年6月1日には、川への鮎の放流や釣りたての鮎を販売するイベントも各地で催されています。
鮎の字の由来は神功皇后の「魚釣り占い」!?
なぜか「魚」偏に「占」うと書いて鮎。そこにはちょっと面白いエピソードというか伝説がありました。
第14代・仲哀天皇の妃である神功皇后は、崩御した天皇に代わり三韓征伐を成し遂げたとして、武運や勝運、出世の神様として多くの神社で祀られている存在です。「日本書紀」の記述によると、その神功皇后が現在の佐賀県唐津市の川辺で釣りをした際に
「もし戦いに勝つことができるなら、魚よ釣り針を食え!」
と念じながら竿を上げると、アユが見事にかかっていて勝利まちがいなしと喜んだ。つまり、戦勝を占ったことに由来して、アユは「占魚」と呼ばれるようになり「鮎」という字があてられるようになったという説があるのです。
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上記は、明治時代に“最後の浮世絵師”と称された月岡芳年が『大日本名将鑑』で描いた、神功皇后と忠臣・武内宿禰が鮎を釣り上げる劇的瞬間の様子。芳年は同じ伝説を題材に、細部を省略した略画も描いていて、それが記事のトップにも掲げたこちらの画像です。
この絵では鮎釣り占いのエピソードがパロディー化されていて、鮎ではなく猫が釣れちゃいました(笑)
その横で見守るのは武内宿禰ではなく、普段は鯛を小脇に抱えているはずの大漁追福の漁業神・えびす様。猫が釣れて一緒に大はしゃぎです。完全にレジャーとしての釣りを楽しんでいるのか、猫をじゃらして遊んでいるのか、いずれにしろとにかく愉快でかわいい、楽しい絵ですよね。
さらに、この鮎釣りの伝説は、毎年7月に京都で行われる祇園祭でも目にすることができます!祇園祭の最大の見所は33基の巨大な山鉾の巡行ですが、その中の一つに「占出山」、別名「鮎釣山」という山鉾があるのです。
この山鉾に乗る御神体(人形)は、右手に釣竿、左手に釣り上げた鮎を持って立つ神功皇后の姿をしています。
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ちなみに中国では鮎という字はナマズを意味するそうで、「地震を占う魚」がその結びつきの由来だという説もあるようです。
下剋上鮎!?お菓子になった鮎3選
次は鮎にまつわるお菓子のお話です。鮎の代表的な料理法は塩焼きや甘露煮でいずれも美味しいですが、実はお菓子のモチーフにもなっているのをご存じですか?ここでは鮎のお菓子を3つご紹介します。
◎初夏の和菓子の定番「若鮎」
この季節になると全国の和菓子屋さんに並ぶのが、カステラの生地で求肥(ぎゅうひ)を包んで鮎の姿を模した「若鮎」です。求肥以外にも羊羹やあんこ、ブルーベリーなどのフルーツを包んだものもあります。
鮎の顔は焼き印で押されていることが多く、表情も違えば形や大きさもお店によって少しずつ異なるので、自分のお気に入りの「若鮎」を見つけてみるのも楽しそうですね!
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◎祇園祭限定の「吉兆あゆ」
先ほどご紹介した祇園祭の占出山にちなんだ、お祭りの期間中限定の和菓子が「吉兆あゆ」です。京都の大極殿本舗では「若鮎」も販売していますが、神功皇后が釣り上げた鮎は戦勝占いの吉兆となったことから「吉兆あゆ」の名で販売されます。
カステラ生地で鮎を模した形になっているところは若鮎と同じですが、吉兆あゆは神功皇后の神前にもお供えされます。
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◎変わり種のお菓子!「下剋上鮎」
岐阜県の長良川の名物といえば「鵜飼」。鵜匠が操る鵜たちが、川に潜っては鮎を飲みこんで獲るという伝統的な漁法です。
しかし、いつも鵜に飲み込まれてばかりではいられない!と鮎が一念発起しました。逆に鵜を飲みこんで下剋上を果たすという図式のユーモラスなお菓子が「下剋上鮎」です。鮎の部分は和三盆糖味、鵜の部分は抹茶と黒砂糖の2種類の味があります。
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まだまだある!鮎のトピック3つ
全国各地の、特に鮎の産地や清流の近くなどには、鮎にまつわるニュースやグルメなどがたくさんありました。その中から3つピックアップしてご紹介しましょう。
◎闘竜灘の「鮎のぼり」
兵庫県加東市を流れる加古川の川底にはたくさんの奇岩、怪岩が横たわっており、水の流れが豪快な景勝地「闘竜灘(とうりゅうなだ)」が有名です。
闘竜灘は、実際に鮎の釣り場としても知られていますが、毎年3月下旬になると流れの上には「鯉のぼり」ならぬ「鮎のぼり」が約300匹、風にたなびきます。この光景が爽快で、毎年多くの人が訪れて賑わうのだとか。
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◎豪快!1匹まるごと「鮎バーガー」
伊豆箱根で唯一川床のある温泉宿「水のみち 風のみち 湯ヶ島たつた」内にあるアウトドアカフェMadoroMiでは、なんと鮎を丸ごと1匹サンドした新感覚のご当地バーガーが味わえるそうです。
清流、狩野川水系で育った美味しい鮎を豪快に使ったハンバーガーは、地元のお店が集まって発足した「修善寺バーガープロジェクト」で誕生。パリッとして香り高い鮎と、自然薯を練り込んでもちっとした厚揚げの食感が絶妙にマッチし、天然の柚柑が爽やかな柚子マヨソースが引き立てるんだそう。ぜひ一度食べてみたいですね。
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◎友釣り発祥地の「鮎手水」
静岡県伊豆の国市大仁に鎮座する大仁神社。高台のお宮の前にある二の鳥居の左側には、参拝前に手や口を清めるための手水舎がありますが、水が出ているのは、何と「鮎」を模した像の口!
大仁は鮎の産地として知られていて、おとりの鮎に向かってくる鮎を狙う「友釣り」という漁法の発祥の地なのだとか。他では見られないユニークな遊び心のある手水舎ですね。
珍しい鮎の手水所 pic.twitter.com/Qx2KFM3LAX
— wat (@koubai1000) September 29, 2019
神功皇后も驚く!?鮎で占う珍しい神事「おんべまつり」
粥占神事や豆占神事など、食べ物を使って一年の吉凶を占う神事というのは現代でも日本の各地にみられますが、おそらく全国で唯一の「鮎占い神事」が、三重県度会郡の滝原という地で行われています。大滝峡のなかにある水戸神神社で、毎年7月の第一日曜日に行われる「おんべまつり」です。
神事では、神前にお供えしてお祓いを受けた鮎を、川の中ほどにある大岩のくぼみに投げ入れて一年間の豊作や大漁を占います。神功皇后が鮎を釣り上げて占ったのに対して、なかなか大胆な手法ですが、穴に直接入れば大吉、入らなければ小吉といった具合に、7月の分から12回投げ入れて月ごとの吉凶が判断されるそうです。
おんべまつり https://t.co/ZXDJ9yxU3Z #三重 #イベント pic.twitter.com/67NQa3xslY
— カモシカ (@miekamoshika) June 1, 2017
毎年この神事の後には、近隣のキャンプ場で鮎の塩焼きやバザーなどが行われて賑わうのですが、残念ながら今年は中止が決定してしまいました。来年は無事に開かれるとよいですね。