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花祭りで有名な奥三河に伝わる盆踊り文化とは!? 参加してみて見えてきたこと

更新日:2021/9/1 小野 和哉
花祭りで有名な奥三河に伝わる盆踊り文化とは!? 参加してみて見えてきたこと

愛知県の北設楽郡、長野県や静岡県と接するエリア、俗に「奥三河」地方とも言われるこの山ぶかい地域、民俗の宝庫と讃えられることもあります。11月の末頃ともなると、「花祭り」と呼ばれる霜月神楽のシーズンとなり、各集落で夜通しの祭りが行われます。

 

奥三河地域の民俗芸能といえば、やはりこの「花祭り」が最も有名ですが、今回の記事では、あまり触れられる機会のない「盆踊り」に注目してみたいと思います。

花祭りについてはこちらの記事を参照!

 

「はね込み踊り」と「手踊り」

東栄町ではお盆の時期になると、初盆の家には親類や組合のものなど、縁故者が、そうめん、ろうそく、線香などのお供えを持って、供養に訪れます。

また、新盆供養として、各地区の神社やお寺、集会所などで供養の念仏踊りが行われます。これがいわゆる「盆踊り」ということになります。布川村では「提灯踊り」といって、男たちが提灯を手に新盆の家を廻ったり、氏神様に行って笛や太鼓によるお囃子や、踊りを奉納したそうです。

東栄町の盆踊りは、「はね込み踊り」と「手踊り」の2つに分かれます。

2018年、六本木ヒルズで開催の「エロティック東三河」で披露された田峯念仏踊。

「はね込み踊り」は、地元の若衆たちがメンバーの中心となります。この踊りは儀式的な意味合いが強く、例えば北設楽郡設楽町田峯の盆踊りでは、菅笠を被って草履を履き、笛や太鼓、鉦を手にして行列を作り、田峯観音堂に勇ましく信仰していきます。踊りは笛や太鼓の調子に合わせて、勢いよく片足をあげながら右へ左へと跳躍します。

一方で「手踊り」は、誰もが輪になって参加できる、よりカジュアルな踊りです。地域ごとにいくつかの盆踊り唄があり、音頭取りの唄に合わせて踊ります。音頭取りが出す本唄に対して、踊り子たちの「返し」があり、そのコール&レスポンスによって、場が一層盛り上がるのです。「手踊り」という名前ですが、曲によっては扇子を持って優雅に踊ることもあります。

穏やかな雰囲気で開催される「古戸の盆踊り」

実際の奥三河の盆踊りの一例を見てみましょう。2019年8月11日、愛知県北設楽郡東栄町振草古戸(フット)で開催された盆踊りに参加しました。会場は冬には古戸の花祭りも開催される「古戸会館」前の広場です。

古戸の花祭り

到着すると、地元の人たちによってバーベキューが行われ、子どもたちが花火をして遊んでいました。広場の中央には非常に簡易的なヤグラが組まれており、本当の意味での「地元のお祭り」といった、心地いい時間が流れていました。

古戸の盆踊りの模様

さて、どんな曲がかかるのだろうと待ち構えていると、カセットテープで流れてきたのは郡上おどりの「かわさき」と「春駒」。やはり東海圏の盆踊りといえば、「郡上おどり」は欠かせないようです。かわさきの踊りは「古戸」流なアレンジが加えられ、新鮮な気持ちで踊ることができました。

郡上おどりが終わると、続いては地元の盆唄が音頭取りの生歌のもとで踊られます。

初めに行われたのが、「十六」踊り。同系統の踊りでは、長野県下伊那郡の「新野の盆踊り」でかかる「十六」がとても有名ですが、実は奥三河地域でもバリエーションの違いこそあれ、人気のナンバーとして広く親しまれています。

踊りとしては、力こぶを作るような動作が特徴的です。

続いて踊られたのが、「ションガイナ」。「ションガイナ」は、「しょうがいな」「しょんがい節」などの名前で、比較的全国に伝わっている民謡の名称です。踊りや歌の節は各地によって異なるようですが、江戸や明治の流行歌だったようです。古戸の「ションガイナ」は、子守唄のようなおだやかさで、踊りながらとても心地のいい気分となってきます。

この日に踊られた盆踊り唄は以上ですが、地元の方にお話を聞くと、この他にも「せしょう」「甚句」といった唄も伝わっていたようです。その他にもたくさんの唄が存在したはずですが、時代とともに踊られなくなったものも多いでしょう。

古戸に伝承されていた盆踊り唄についての資料は持ち合わせていないのですが、周辺地域とある程度と共通する部分はあると思われるので、他の地区ではどのような踊りが踊られていたかという資料をもとに、いくばくかは推測できるでしょう。

<長野県下伊那郡阿南町>
すくいさ、高い山、音頭、十六、おさま甚句、おやま、能登

<北設楽郡御殿村(現・東栄町大字月、大字中設楽)>
おッさま甚句、十六踊、のと踊、さんさ踊、おんたけ踊(志ょんがいな踊、セッセ踊、数え歌)

<北設楽郡設楽町田峯>
十六踊、ヤンサ、セショウ、オサマ甚句、ションガイナ、トヨイ、高い山、能登、音頭、コラサ、セッセ、すくいサ、数え歌、踊らんせ数え歌

<愛知県豊田市綾渡町>
越後甚句、御嶽扇子踊り、高い山、姫づくし、東京踊り、ヨサコイ節、十六踊り、御嶽手踊り、笠づくし、甚句踊り

興味深いところでは、綾渡町の「ヨサコイ節」。ヨサコイといえば、お祭り好きでは聞き覚えのある方も多いかもしれませんが、高知県の「ヨサコイ祭り」。なんで高知のヨサコイが?と思われそうですが、「ヨサコイ節」が明治時代に全国的にもかなり流行したようで、東京、山梨、長野、愛知県などの甲信越地方にも、さまざまな形で伝わっています。北設楽郡設楽町でも大字津具の盆踊りでは、現在も「せっせ踊り」の名前で踊られています。

ダム建設も進む設楽町と文化の継承

地元の方にお話を聞くと、かつて古戸ではお盆の13日〜17日の五夜連続で盆踊りが行われていたそうです。現在と違ってご婦人方も多く参加して、返しの歌声も盛大だったとか。いまは地区のご老人はほとんど盆踊り会場に来られていないようで、昔よりは随分と寂しい風景になっているかもしれません。

往時のこの辺りの盆踊りがどれだけ盛況だったか、隣村である「布川」に関する記述からもうかがい知れます

「手踊りは盆月になると毎夜のやうに集まって男女混淆で踊るもので、十六、甚句、さんさ等盆近くになるとそれこそ村中総出の形で毎夜毎夜を踊りぬくのである。若い者の中には隣村まで踊りに出かけたものださうだ。老人たちの話をきくと若い者達は次から次へと踊りに歩いて家に帰って寝る者などは稀だったさうだ」(設楽民族研究会編『設楽』p19)

その夜は一緒に訪れた友人と車中泊をするつもりだったのですが、みかねたのか、地元の方が自宅に泊めてくださいました。地方の盆踊りに行くと、このようなご好意に預かることが多く、本当に感謝です。

家の中には花祭りに関する様々な記念品があります。祭りを大切にしている地域であることがひしひしと感じられます。

実はこの北設楽郡設楽町では、2026年に完成予定という設楽ダムの建設が進んでいます。設楽ダム工事事業所のホームページのよると(2021年9月1日閲覧)、97%の用地取得が完了し、家屋移転(124世帯)は100%が完了しているようです。

人々の暮らしをよくする目的で建設されるダムではありますが、開発による人口の流出や、文化の根幹となる「土地」が失われることで、今回ご紹介したような盆踊りなどの民俗芸能が消滅の危機にさらされていることも、決しては忘れてはならないと思います。

<参考文献>
・設楽民族研究会編『設楽』
・竹下角治郎 熊谷好惠共著『三州田峯盆踊』
・東栄町誌編集委員会編『東栄町誌「自然・民俗・通史編」』
・竹内勉著『民謡地図8 恋の歌垣 ヨサコイ・おばこ節』

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
東京在住のライター/編集者。千葉県船橋市出身。2012年に佃島の盆踊りに参加して衝撃を受け、盆踊りにハマる。盆踊りをはじめ、祭り、郷土芸能、民謡、民俗学、地域などに興味があります。共著に『今日も盆踊り』(タバブックス)。
連絡先:[email protected]
Twitter:koi_dou
https://note.com/kazuono

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