2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2021年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
古き良き正月の大運動会
今回は、豊作豊漁や家内安全などを願う長崎県は五島列島(福江島)の奇祭「ヘトマト」を紹介する。1月中旬に行われるお祭りで、正月行事とも言える。対決を主軸とした行事が多いのもこのお祭りの特徴だ。
まずは午後1時ごろから白浜神社で行われる「奉納相撲」からスタート。子どもや中学生の部に続き、地元の青年団と消防団による真剣勝負が行われた。ここから青年団対消防団の3本勝負が始まる(今は青年団対消防団だが、昔は東地区と西地区との対決だったそう)。相撲が終わると、今度は正月らしい華やかな着物で着飾った新妻同士による「羽根つき」対決。酒だるの上に乗って戦い、羽根つきの数が続くほうが豊作豊漁となるといわれている。この辺から「へぐら」と呼ばれるススを体中に塗った若者が待機。彼らに捕まると、観光客といえども容赦なく顔にススを塗られてしまう。
青年団と消防団の2回戦は「玉せせり」。わらで編んだ玉を、へぐらを塗ったふんどし姿の男たちが奪い合うという謎の球技。昔はこの競技で鯨の分配量を決めたのだそう(もちろん今は捕鯨はしていない)。3本勝負のラストは「綱引き」で、この結果で豊作と大漁を占う(おそらく昔は農村部と漁村部による対決だったのではと推察される)。日本各地で小正月に行われる年占行事の一種といえるだろう。
最後のフィナーレは長さ3メートルの大草履が登場し、山城神社へ奉納。道中では見物の娘さんを乗せては胴上げをくり返す。この祭り一番のハイライトだ。
ふんどし姿の男たちが主体の奇祭「ヘトマト」だが、多彩な行事で見所が多く、また見物客がススを塗られたり、若い女性が胴上げされたりと、参加型の要素もあるところが人気の秘密ではないだろうか。五島列島には名物の五島うどんもあるので、ぜひ現地を訪問してみては。