出雲大社「神在祭」八百万の神々が集まる神在月
出雲大社の名は正しくは「いずもおおやしろ」。神無月とは旧暦の10月のことですが、出雲だけは八百万の神がやってくるため「神在月(かみありづき)」と呼ばれています。神様たちは縁結びの会議をするために出雲に集まり、この神在月にはたくさんの神事「神在祭」・「御忌祭(おいみさい)」が行われます。土地の人たちはこの「お忌みさん」の期間は粗相がないよう静粛に過ごすのだそうです。
この記事では大阪出発の日帰り旅行で、神在月に出雲を訪れた風景をご紹介いたします。
写真:稲佐の浜 歩いて行ける弁天島
古事記「神話 国譲り」の稲佐の浜
サラサラとした美しい砂と潮風のそよぐ稲佐の浜。
この稲佐の浜では近年、砂浜が広がったため歩いて行けるようになった「弁天島」という小さな島があります。この弁天島には明治まで弁財天が祀られていましたが、現在は豊玉毘古命(とよたまひこのみこと)が祀られています。
古事記「神話国譲り」には天照大神(大国主大神)が瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)・建御雷神(たけみかづちのかみ)に国譲りをした浜辺と書かれており、旧暦10月10日には神迎神事が行われます。
神籬(ひもろぎ)に「龍蛇神」が宿り、八百万の神々を迎える神事はとても幽玄な景色だそうです。
さまざまなご縁を結ぶ神様の会議「神議り(かむはかり)」
稲佐の浜から出雲大社への道は二つあります。一つは「神迎えの道」。神迎神事のあと、龍蛇神を先頭に高張提灯が掲げられ、奏楽を奏上する行列が歩く道です。
もう一つは「上宮(かみのみや)」という「神迎えの道」から一本入った小さな道。
今回は出雲大社摂社の下宮(しものみや)、上宮、大祓社から国道431号線に入り、出雲阿国のゆかりの地を巡る「神在月にしか見られない上宮」への道へと進みます。(地図はこちらから参照)
出雲大社の摂社「上宮(かみのみや)」で行われる縁結びの会議「神議り(かむはかり)」。神在月だけ、その扉が開いています。
出雲大社のお参りの仕方は神様をお讃えするという意味がある4拍手の作法「二礼四拍手一礼」。
静かな空間にパンパンパンパンと四度手を叩く音が響きわたる。手を合わせ、八百万の神様たちにお会いできたことに感謝。あぁ、神在月に来られて良かった!と感激。
そして次はいよいよ、出雲大社の境内です!
出雲大社の巡り方
鳥居のある「勢溜」は江戸時代には芝居小屋がたくさんある「人々の勢いがたまる場所」でした。
鳥居のそばは平らで広い空間。ここで芝居をしていたというのもうなづけます。一番高い位置にあり、振り返れば白い石で出来た第一の鳥居、反対側には下り坂参道と眺めの良い景色が広がります。
その下り坂参道の途中には長い行列が見えます。これは「祓社(はらえのやしろ)」で、今生の罪穢れを払う場所。ここには大祓詞に出てくるほどの強力な神様である瀬織津姫(せおりつひめ)が祀られています。出雲大社では人気の場所のため、時には身を清めようという人々の列が1時間以上にもなることもあるそうです。
次は樹齢400年と言われている松の参道。昔はこの中央の道は神様や天皇陛下など、身分の高い方だけが通ることが許されていました。現在は松を保護するためという看板がかかった足止めが置いてあります。
この松の参道を進むと今度は右側に「ムスビの御神像」という大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)様の像が見えてきます。
大国主大神にはたくさんの名前があり、その中の一つは「大黒様」。「因幡の白兎」の神話の中で傷ついたウサギを助けた優しい神様です。
この大国主大神の像の前にある金のオブジェは出雲大社での神語「唱詞(となえことば)」である「幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)」をあらわしています。
ムスビの御神像を過ぎると、銅鳥居が見えてきます。ここから御本殿周辺の瑞垣(みずがき)を左回り(時計と反対回り)にお参りするのが正式な参拝方法です。
写真:銅鳥居と拝殿
さて、出雲大社と言えば、大きなしめ縄!
通常のしめ縄と逆になっているのが特徴です。
この拝殿のしめ縄を見ると「出雲大社キター!!」という気持ちになります。
拝殿よりもさらに大きな日本最大級のしめ縄は長さ13m、太さ8m、重さ5トンという大きさで神楽殿にあります。正式参拝の場合、一番最後の参拝になります。
写真;神楽殿 多くの人が記念撮影をしている
そして、いよいよ神在月ならではの光景に出会えます。
それは出雲大社御本殿の両側にある「十九社(じゅうくしゃ)」。ここには神々が宿泊するというお宿「御宿社」があり、この神在祭の期間のみ扉が開いています。
写真;東十九社 神様が泊まる場所。神在祭の期間だけ扉が開いている。
神々が「神議り(かむはかり)」をしている「上宮(仮宮)」と、このお宿である十九社の「御宿社」は神在月のみ扉が中を拝見できる場所。ぜひ見逃さずに見ていってください。
神在祭限定の御朱印は北島國造館にあり!
出雲大社の境内にはもう一つ、「北島國造館」という出雲教のお社があります。
学問の神様「菅原道真」はこの国造家の子孫。ぜひお参りしていきたい場所です。
とにかく北島國造館はお庭が素晴らしい。テレビなどで見慣れた出雲大社のしめ縄よりも、神域内最古の建物である四脚門 (しきゃくもん)から三つの境内社「御三社」へのアプローチがまさにパワースポット感満載。そして池、滝、小島に天満宮のお社と急に別天地に来たような「竜虎の庭 (りゅうこのにわ)」が、見ごたえ抜群。見る角度によって印象が違うので写真撮影も楽しい場所です。
そんな北島國造館にある神在月限定の御朱印(書き置きのみ)は、ぜひいただいていきたいところ。出雲大社での御朱印は複数あり、拝殿のそばと神楽殿、そして北島國造館の3カ所でいただけます。限定御朱印がいただけるのは北島國造館だけ!龍蛇神のお姿が入っているのも嬉しいですね。
(出雲大社についてはコロナ対策で新しい御朱印帳のみ書いていただけます)
土地を守る神の「御砂」素鵞社(そがのやしろ)
本殿の北側に鎮座する素鵞社(そがのやしろ)には素戔嗚尊が祀られています。
そして、この素鵞社にある砂は家や土地を守るご利益があり、稲佐の浜の砂をこの素鵞社にお納めし、床下にある砂を少しいただく、という手順が必要です。この砂を自宅などの土地の四方に巻くことで神様から守られます。
こうして本殿の周りを時計回りに歩くと、東は神の宿「東十九社」と限定御朱印のある「北島國造館」、北にはお砂の「素鵞社」、そして西側には「本殿西遥拝場」があります。御神座が西向きで祀られているため、大国主大神に正面から拝礼ができる西側から、お参りをしていきましょう。
この遥拝場を過ぎると神在月だけ扉が開いている西十九社、そして最後に出雲大社のシンボルである神楽殿のしめ縄をお参りできます。これで出雲大社を一周!お疲れ様でした!!
写真:西十九社
神在餅(じんざいもち)=ぜんざい
神在祭の際にふるまっている神在餅。これが出雲弁(ずーずー弁)だと「ずんざい」と訛って聞こえ、ぜんざいという名前で京都に伝わって行ったのだそうです。
出雲はぜんざい発祥の地。ほっと一息ついていきたいですね。
最後に神在月に訪れてみて…。
訪れる1週間前は強い偏西風が吹く「お忌みさん荒れ」のため、参拝した人は傘もさせないほどの荒天で全身ずぶ濡れだったそうですが、この日はとても穏やかでココロ休まる一日を過ごせました。
大阪からの日帰り旅行で一番遠い場所、島根。高速道路の開通により片道4時間半ほどの日帰りで来られるようになり、全国から大阪経由で日帰り旅行で訪れる人も増えたのだとか。…大阪からほんとに来れたよ。島根まで。(筆者は早朝、京都から出発)
次回は神在祭の期間に滞在して、静かに浜辺で行われる神事から拝見してみたいです。
出雲大社
〒699-0701島根県出雲市大社町杵築東195
TEL : 0853-53-3100
FAX : 0853-53-2515
https://izumooyashiro.or.jp/
神在祭スケジュール
旧暦10月10日 神迎神事〜御神幸〜神迎祭
旧暦10月15日 神在祭・結願大祭
旧歴10月17日 神在祭・結願大祭・神等去出祭(からさでさい)