毎年9月20日、石川県七尾市で「お熊甲祭り」が開催されます。
猿田彦が踊りながら祭りを先導し、若者が20メートルの真紅の旗を担ぐ勇壮な祭り。この記事では、奇才ハンター、まっくさんの2018年の現地レポートをお届けします。
目次
君はガチの神ダンスを見たことがあるか!?
毎度どうも。神ダンス愛好会所属の奇祭ハンター、Macです。
今回は天狗の原型になったとも言われる「猿田彦」が神舞を踊ることでも有名な石川県が誇る奇祭にしてフォトジェニック祭、別名「二十日祭り」とも言われる「お熊甲祭」をレポート。
ガッツリ平日の9月20日(木)、能登まで行ってみた!
毎年20日に行われる奇祭(律儀~。ザッツ伝統!)ということでガッツリ平日でしたが、しっかり休暇を取って(汗)行って参りました。
朝、金沢駅に着いたらいしかわ鉄道線「特急かがり火号」(和倉温泉行)でいったん七尾駅へ。
七尾駅でのと鉄道七尾線に乗り換え、最寄りの能登中島駅を目指します。
のと鉄道七尾線では偶然、ラッピング電車に乗ることになりました(汗)。
写真のアニメは『花咲くいろは』。
『花咲くいろは』(通称・花いろ)と言えば、
東京の女子高生が祖母が経営する老舗の温泉旅館で働くうちに成長してゆく物語。
アニメに登場した架空の祭「ぼんぼり祭り」が、舞台モデルとなった金沢市の湯桶温泉で
毎年秋に実際に開催されることとなったという話は祭業界ではあまりにも有名(?)な話です。
まあ、「ぼんぼり祭り」の話はまた今度にするとして……。
どーーーん。
能登中島駅を降りて、七尾市中島町に着きました。
本当に「ザ・日本の里山」という感じです。
行きの電車で乗り合わせたフランス人家族に、会場までの送迎バスがあるから一緒にと教えてあげました。
逆に県外から来ている日本の観光客はそんなに見当たりませんでした。
まぁ、平日ですしね(汗)。
連休後の平日にわざわざ休みを取って郊外から奇祭を見に来るのは、日本の里山とオマツリ大好きフランス人と奇祭ハンターぐらいのものです。
シャトルバスに乗って、お祭りの舞台となる思わず舌を噛みそうな久麻加夫都阿良加志比古(くまかぶとあらかしひこ)神社(別名・熊甲神社)に着きました。
深緑の里山をバックに、赤の大旗が何本も立ち並ぶ様は何ともフォトジェニックです。
高さ約20メートル、深紅の色が鮮やかなこの「大枠旗」こそこの祭のシンボル。
この大旗を担いで練り歩く「枠旗祭り」は、全国でもこの地域でしか見られません。
「イヤサカサー」の掛け声と鉦・太鼓の音も賑やかに、朝8時から境内への参入がすでに始まっていました。
旗の根元にはカワイイ猿の人形が飾られています。
旗ごとに装飾は少しずつ異なるので、ココ、鑑賞のポイントです。
さて、そもそもこの地域独特の「お熊甲祭」とは一体、どんな祭なのでしょうか?
ちょうど境内の近くにお祭り資料館があったので、資料館で撮った画像とともに説明しましょう。
そもそも「お熊甲祭」ってどんな祭?
「お熊甲祭」とは、久麻加夫都阿良加志比古(くまかぶとあらかしひこ)神社の大祭で、
毎年必ず9月20日に行われることから「二十日祭り」とも呼ばれています。
「お熊甲祭」は、以下の3つのステップで構成されています。
【ステップ1】町内の各集落に鎮座する19の末社からくりだした神輿が、
猿田彦の先導で、高さ約20メートルの深紅の大枠旗やお道具を従え、
「イヤサカサー」の掛け声と鉦・太鼓の音も賑やかに、本社に参入します。
【ステップ2】拝殿に全神輿が集結すると、本社で奉幣式に移り、若衆が鉦・太鼓を打ち鳴らし、
それに合わせて猿田彦が境内いっぱいに乱舞します。イッツ、ダンスタイム。
【ステップ3】祭典後、本社の神輿を先頭に、クジ順に渡御(とぎょ)が行われ、
境内から700メートルほど離れた加茂原(かもはら)へ移動します。
資料館には、このお祭りのもう一つのシンボルである猿田彦のマネキンが多数展示されていました。
猿田彦は、日本神話の天孫降臨の際、天照大神に派遣されたニニギノミコトをナビゲートした国津神(古代日本の土着の神)です。
そんな導きの神・サルタヒコは、手塚治虫の『火の鳥』にも多く登場しますし、猿田彦珈琲の名前の由来でもありますし、その長い鼻などの特徴から天狗の原型とする説もあるそうです。
説というか、見た目はもう天狗そのものですよね。
さあ「お熊甲祭」についての歴史がわかったところで、
神社に戻ってみましょう。
いよいよサルタヒコ神が登場!
資料館から神社の前に戻るとすでに事態は【ステップ2】へ。
天狗じゃなかった、サルタヒコの集団が周囲を乱舞していました。
天狗面のほかに翁面もあります。
え?
はいはい。動いているところが観たいですよね。
年に1度しか見られない、サルタヒコの神ダンス(グループ、ソロ)をぜひご覧ください。
ダンスと言うより太極拳を彷彿させる、気功を操るような動きが特徴的ですよね。
神社から渡御してフィナーレ!
猿田彦の群舞に見とれているうちに、お祭りはいよいよ【ステップ3】のフィナーレへ。
神社に集結した19の神輿+αが、境内を出て移動する渡御(とぎょ)の始まりです。
20メートルある大旗は神社の鳥居より優に高いので、運び出すのも一苦労ですね。
「イヤサカサー」の掛け声とともに、無事に大旗枠が運び出されました。
上に乗るサルタヒコ神もどことなく、ドヤ顔です。
お主、さては天狗か?(天狗だった!!!)
2列の隊列で鉦・太鼓を打ち鳴らしながら行軍が続きます。
右方に見えるのは、四神獣である玄武と朱雀を描いた旗。
悠久の昔を感じさせる独特の装束もまた鑑賞のポイントです。
民家が並ぶエリアを通って加茂原へと向かう一行。
電信柱より長い大旗がシュールです。
最後に、のどかに進撃する祭列一行の映像を下記に貼っておきます。
いかがでしたか、今回の「お熊甲祭」。
猿田彦の乱舞や独特の装束など、飛鳥時代よりももっと前、
大陸から渡来人がやって来た頃の悠久の時を強く感じさせるその在り様は、星の数ほどある日本の祭りの中でも唯一無二の存在と言えましょう。
それではまた、次回の奇祭旅でお会いしましょう。
(オマケ)
何と帰りもまたラッピング電車!
行きは『花咲くいろは』に乗ったと思ったら、帰りは永井豪列車でした。
アニメ・マンガ大好き過ぎかよ、のと鉄道!
今回のオミヤゲジャパン
利家御前(1050円)と加賀棒茶(130円)
旅情を盛り上げてくれるご当地駅弁の中から今回は、
重箱に入った少し豪華な幕の内弁当「利家御前」をセレクト。
お茶は加賀・金沢で普段から飲まれているほうじ茶(棒茶)を合わせました。
金沢駅周辺は回転寿司でも美味しい人気店がいくつもあり、
金沢21世紀美術館や兼六園へのアクセスも至便。
オマツリといっしょに金沢観光やグルメも堪能し尽くしましょう。