六斎念仏踊りとは
京都のお盆といえば「五山送り火」が有名ですが、この時期に各所のお寺で実施されるものに「六斎念仏踊り(ろくさいねんぶつ おどり)」があります。
六斎念仏踊りは仏教における斎日の一つ、六斎日(毎月8、14、15、23、29、30の6日間)に行われてきた念仏踊りのことで、現在でも京都においては15箇所へと伝わり「京都の六斎念仏」と総称され実施されているものです。長年に渡り京都の地域性や文化と共に発展してきた「京都の六斎念仏」ですが、2022年には「風流踊」の一つとしてユネスコの無形文化遺産にも登録されました。
今回はこの「京都の六斎念仏」の中から、壬生寺で開催される「中堂寺六斎念仏」を紹介します!
京都・壬生寺が舞台
京都市中京区にある壬生寺は、991年(正暦2年)の創建と伝わる律宗大本山の寺院です。時代が下り幕末には、当時壬生浪士組と呼ばれていた新選組の拠点の一つとなり、境内が訓練場として使用されてきた歴史もあります。
この壬生寺で盂蘭盆(うらぼん)の時期に開催されるのが六斎念仏踊りです。例年8月9日の精霊迎え火に合わせて「壬生六斎念仏」が、16日の精霊送り火に合わせて「中堂寺六斎念仏」が奉納されています。
16日の壬生寺の門前へとやってくると、盆行事の開催を知らせる看板が掲げられていました!
門をくぐり突き当たりまで進むと出迎えてくれるのが本堂です。こちらの本堂の前で六斎念仏踊りが奉納されますが、19時の開催に合わせて中堂寺六斎会の皆さまが登場しました!
太鼓の音が壬生寺一体に響きます。
京都の六斎念仏の特徴の一つが、笛です。鉦と太鼓を使って行われる念仏踊りは各所にありますが、京都ではこれに笛が加わり華やかに演奏されていきます。
軽やかな音色が良いですね。
壬生寺で六斎念仏踊りがはじまりました!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/jLfSOfWUHv
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) August 16, 2023
この日は1時間半に渡りいくつもの演目が奉納されていくのですが、この演目では綺麗に着飾った若者がご活躍。演目の名は「橋弁慶」ということで、若者は牛若丸です!
弁慶も登場し、今では京都の観光地の一つでもある五条大橋を舞台にやり取りが繰り広げられていきます。この演目は、壬生狂言から抜粋されたものなんだそうですよ。
刀を振って、避けてと二人の見事な立ち回りに注目です。見応えのある演目でした。
二人の太刀捌き、ぜひ映像でもご覧ください!
ただいまの演目は橋弁慶。弁慶と牛若丸が五条大橋で闘います。なんと中のお二人は親子なんだそうですよ!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/L1B57AEFi5
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さらし、四つ太鼓、祇園ばやし
演目が進み明るい音楽とともに現れたのは、真っ白なさらしを手に持った女性の皆さま。かつての中堂寺六斎会では男性のみで六斎念仏踊りを実施していたそうですが、2003年(平成15年)からは女性の参加を認めて実施されています。
時代とともに伝統も変化させながら、新しい形の六斎念仏踊りを作っていっているんですね。
さらしを上下左右に動かし、場を華やがせていきます。
さらしを使用したパフォーマンスが見事でした!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/W1OdvDQedc
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) August 16, 2023
続いての演目は、四つ太鼓。その名の通り、舞台中央に据え置かれた4つの太鼓を叩いていくものです。2本のブチ(バチ)で器用に叩いていく様には目が釘付けになるのではないでしょうか。四つ太鼓を代わる代わる複数の人が行っていく様子は発表会のようでもあり、叩き手にとっては腕の見せ所です。
四つ太鼓です。その名の通り、四つの太鼓をお囃子と合わせて叩いていきます。こんな太鼓の配置ははじめて見ました!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/ctBjhk0TfG
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老若男女次々に叩いていき、一人一人が叩き切った瞬間の雰囲気がたまりません!
二人でセッションのように叩く場面もありました。
太鼓を横に広げたバージョンも繰り広げられていきます。
四つ太鼓には、横一列に四つの太鼓を並べたバージョンも!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/ZYg0jkD6yL
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お次は祇園ばやし。祇園祭はひと月前の7月に終わってしまっていますが、ここで祇園祭が感じられるお囃子が聞けるというのは嬉しいですよね。祇園ばやしは「コンチキチン」と称されることもありますが、正にそのような音色を楽しむことができますよ。
祇園祭は先月終わりましたが、壬生寺の六斎念仏で祇園ばやしを聞けたのは嬉しかったですね!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/zCJraNakhq
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祇園ばやしが奏でられている中、祇園祭でも見ることのできる「棒振り」が登場。
その名の通り棒を振りまくる、ダイナミックな動きに要注目です!
祇園祭にも登場する棒振り。お囃子を背にダイナミックな動きをしていました!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/NPNVajntTZ
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円になって子どもから大人までが一緒に踊る演目は、猿廻し。ユーモアのある振り付け、ゆったりとしたテンポで、初心者にとっては練習の場にもなるそうですよ。
子どもたちが入って軽やかに舞われる猿回し。見よう見まねで小さい子でも踊れる、六斎念仏踊りの入口のような曲目ですね。#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/TEk8OMtt7h
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こちらは中堂寺六斎会オリジナル演目である、七草です。中堂寺六斎会にとって重要な曲、そして難易度も高いことから見応え満点の演目となります!
観客席からの目線も舞台へと集中です。
壬生寺の六斎念仏ならではの演目、七草。豆太鼓の表と裏を軽やかに相打ちで叩いていくのが見どころです。リズムの良い曲で聴き入ってしまいますね!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/cPaCJZtxax
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ここで、舞台の背景に広がる明かりをご紹介。こちらは孟蘭盆に合わせ設置される万灯です。先祖供養の祈りを込めた灯籠の明かりで、毎年1000以上が奉納されます。9日の精霊迎え火から16日の精霊送り火まで、お盆の8日間に飾られていました。
クライマックスは獅子舞
1時間半に渡り開催される六斎念仏踊りですが、そろそろ終わりの時間が近づいてきました。そしてこのクライマックスに合わせ登場してくれるのが、獅子舞です!獅子太鼓を奏で、獅子を呼び出していきます。
獅子舞を呼び出す獅子太鼓です。後方で獅子がスタンバイしていますよ!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/iSrCGyuReJ
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) August 16, 2023
後ろから顔を現したのは、緑色の獅子!
のそのそと舞台前方へと進んできます。
そしてポーズを決めました!
全身緑色で、なかなかの存在感。獅子のムードに会場は和やかな雰囲気が広がります。
と思ったら突然曲芸を。これには「おおっ!」と歓声が上がりました。
続いて逆立ちのような姿にも!
そうこうしているうちに、赤獅子も登場です。
二体で調子を合わせていきます。
二体同時に逆立ちポーズを決めました!
赤獅子は何やらかわいらしいポージングも。
からの足を開いてすごい姿に。
大バク転も見せちゃいますよ!
大バク転を見せる赤い獅子舞!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/EJdvaDcXDu
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) August 17, 2023
今度は頭を上に伸ばしていきます。
と思ったら、急に観客へ威嚇を。躍動感がものすごい。
今度は舞台中央部に台が用意されました。
この台へ上手に登り、こんな高いところに赤獅子が佇みます。
そしてこの台の上でなんと、先ほどの逆立ちを披露しました!これにはもう大拍手です。
赤い獅子舞は五層の台の上で大技を。これはすごい!技が決まると観客の皆様から拍手が起こっていました!#壬生寺 #六斎念仏 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/9YuwrL496O
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) August 17, 2023
アクロバティックな技を見せ疲れてしまった獅子の元へ忍び寄るのは、土蜘蛛。その気配に気付き立ち上がった獅子に向けて、土蜘蛛が蜘蛛の糸を発し攻撃してきます。
何度も行われる蜘蛛の糸の攻撃。目の前で繰り広げられる技は大迫力です。
激しい攻防の末、見事赤獅子が土蜘蛛に勝利しました。その闘いの激しさを物語る蜘蛛の糸が身体には絡まっていますね。
赤獅子の周りでは祝いの太鼓が叩かれ、この日の六斎念仏踊りは終演へと向かっていきます。ちなみに中堂寺六斎会では、獅子を正義の象徴、土蜘蛛を邪悪の象徴と位置付けているそうですよ。
終演後、蜘蛛の糸は観客へと配られました。こちらを持ち帰ると、無病息災や金運のご利益がいただけるんだとか。
筆者もありがたくいただきました!これは嬉しいですね。大切に持ち帰り、ご利益にあずかりたいところです。
万灯の明かりにぼんやりと照らされる中、六斎念仏踊りは終了しお開きとなりました。
壬生寺へのアクセス
・JR山陰本線 丹波口駅から徒歩11分
・阪急京都線 大宮駅4番出口より徒歩5分
・壬生寺道バス停より徒歩2分(京都駅前バス停より市営26、28で壬生寺道バス停へ向かえます)
毎年お盆時期に京都各地で行われる、六斎念仏踊り。ぜひ京都ならではの伝統的な光景を見に来てみてください!