夏祭りの代表格といえば東北の「ねぶた祭」。巨大なねぶたを乗せた山車、お囃子、参加者の練り歩きなど、ねぶた祭には「これぞ日本の祭り!」というエッセンスがたっぷり詰め込まれています。お祭りに興味のある人なら一生に一度は生で見たい迫力のねぶた祭について、概要や由来をご紹介します。
また、2023年には一般人が参加できることで人気の「ハネト(跳人)」が、コロナ禍を経て本格復活!観覧スタイルも進化して、一生に一度の夜を特別なものにしてくれる最新型の観覧席も登場しました。これらのニュースについてもお伝えします。
(この記事は2019年に公開されたものを再編集しています。2023年11月15日 編集部更新)
ねぶた祭ってどんなお祭り?
「ねぶた祭」は主に青森県の各地で行われ、明かりを灯した巨大な灯籠(=ねぶた)を山車に乗せて街中を練り歩く大変華やかなお祭りです。その起源は奈良時代まで遡るといわれており、地元の多くの人にとって一年で最も重要なイベントとされています。
中でも青森市で行われる「青森ねぶた祭」は毎年200万人以上を動員し、仙台の七夕祭り、秋田竿燈(かんとう)祭りと並んで東北の三大祭りに名を連ねる大人気のお祭りです。
「ハネト」と呼ばれる人々がねぶたの周りを取り囲み、お囃子の音に合わせて元気よく飛び跳ねる姿を一目見ようと、全国からの観光客で賑わいます。
青森市以外にも、青森県内だけでなんと40以上の地域(!)で、夏に同様のお祭りが開催されています。
起源は七夕?ねぶた祭の由来
ねぶた祭は、奈良時代に中国から伝わった「織姫と彦星」のストーリーを持つ七夕祭りと、もともと津軽にあった農村の風習としての七夕行事が融合・変形したものだという説が有力です。
昔の七夕=7月7日は旧暦ですから、現在ねぶた祭が行われている8月上旬くらいになります。この時期は8月15日のお盆の直前ですから、お盆にご先祖様の霊を迎える前に川や海に入って身を清めると同時に、忙しい農作業中に厳しい暑さに負けないよう、のぼせや眠気も水に流して払っていました。
やがて自分が水に入る代わりにワラ人形や人の形に切り抜いた紙、灯籠を流すようになった、あるいはお盆最終日にご先祖を送る灯籠流しの習俗が合体して、灯籠(ねぶた)を主役とした祭りに発展。灯籠(ねぶた)が巨大化するにつれ水に流すことをやめ、町の中を曳き回す祭りになったといわれます。
「ねぶた」の語源についても諸説ありますが、眠気を流す「眠り(ねぶり)流し」「ねむた流し」などと変化し、「ねぶた」または「ねぷた」と言われるようになったとの説が有力です。
ねぶた祭の開催場所は?
ねぶた祭の多くは7~8月の間、青森県内の各地で行われています。まずは「三大ねぶた祭り」とも称される3つの祭りの開催日と場所をご紹介します。
青森ねぶた祭
日程:毎年8月2日~7日 ※曜日にかかわらず毎年同日
場所:青森市中心部(JR青森駅付近 東側)
アクセス:東京駅から新幹線「はやぶさ」約3時間30分
弘前ねぷたまつり
日程:8月1日~7日 ※曜日にかかわらず毎年同日
場所:弘前駅付近
アクセス:JR新青森駅より奥羽線で約40分
五所川原立佞武多(ごしょがわらたちねぷた)
日程:8月4日~8月8日 ※曜日にかかわらず毎年同日
場所:五所川原市街地(青森県所川原市大町506-10) 付近
アクセス:青森空港から車40分または新青森駅から車45分
特に有名なこの3つのねぶた祭りでも、ねぶた(ねぷた)の形状がまったく異なり、踊りやお囃子のテンポも違うなど、地域ごとの特性が出るのもお祭りの醍醐味ですよね。3か所とも毎年同日程で開催され場所も近いので、スケジュールに余裕のある方は全て回ってみるのもいいかもしれません。
こんなにあった!青森のねぶた祭り
観光客向けに開かれているものの代表は前述の3つですが、他にも青森県内だけでこんなに多くのねぶた(ねぷた)祭りが存在します。
浅虫ねぶた – 青森市
浪岡ねぶた – 青森市
相馬ねぷた – 弘前市
岩木ねぷた – 弘前市
金木ねぷた – 五所川原市
市浦ねぶた – 五所川原市
黒石ねぷた – 黒石市(青森県指定 無形民俗文化財)
木造馬ねぶた – つがる市
つがる市ネブタまつり(木造ねぷた) – つがる市
稲垣ねぶた – つがる市
柏ねぷた – つがる市
車力ねぶた – つがる市
森田ねぷた – つがる市
平川ねぷた- 平川市
碇ヶ関ねぷた – 平川市
尾上ねぷた – 平川市
大畑ねぶた – むつ市
大湊ネブタ – むつ市
川内ねぶた – むつ市
田名部ねぶた – むつ市
脇野沢ねぶた – むつ市
鯵ヶ沢ねぷた – 鯵ヶ沢町
板柳ねぶた – 板柳町
田舎館ねぷた – 田舎館村
今別ねぶた – 今別町
岩崎ねぷた – 深浦町
深浦ねぶた – 深浦町
大間ねぷた – 大間町
大鰐ねぷた – 大鰐町
風間浦ねぷた – 風間浦村
蟹田ねぶた – 外ヶ浜町
三厩ねぶた – 外ヶ浜町
小泊ねぶた – 中泊町
中里ねぶた – 中泊町
佐井ねぷた – 佐井村
鶴田ねぷた – 鶴田町
東通ねぷた – 東通村
常盤ねぷた – 藤崎町
藤崎ねぷた – 藤崎町
平内ねぶた – 平内町
横浜ねぷた – 横浜町
(参考)Wikipedia
その数なんと40以上!すごい!!
全部見て回るのはさすがに難しいかもしれませんが、いかに青森県の中でねぶた祭りが根付いているかがよくわかります。
ここに挙げているお祭りの中には地域の子どもたちが作ったねぶたを引くなど、より地域密着型のお祭りもあるようです。もちろん見学はできますので、よりディープな世界へ足を踏み入れたい方にはオススメの穴場スポットもありそうです。
ルールを守れば当日参加OK!あなたもハネトになれる!
ねぶた祭りの主役はもちろんねぶたを乗せた山車ですが、青森ねぶた祭ではこれを盛り上げる「ハネト」が大変重要な役割を果たしています。
ハネトは「跳人」と書き、文字通り飛び跳ねる人を指します。お囃子のリズムに合わせて元気よく飛び跳ね、「ラッセーラー!ラッセーラー!」と掛け声をかけながら山車と共に練り歩くハネトは常に注目の的です!
実はこのハネトはルールさえ守れば、誰でも当日に飛び入り参加することが認められています。ルールは簡単で、ハネトの衣装(正装)を着ていること、勝手な鳴り物などを持ち込まないこと、その他運営の方の指示に従うことです。予約や登録は一切不用。あとはねぶたの運行が始まる前に、衣装を着てハネトの集合場所に行くだけ!
衣装は地元の百貨店で購入したり、レンタルも可能ですし、中には着付けもしてくれるところもあるので意外と参加のハードルは高くありません。
参考:ハネトの着付けと踊り(青森観光)
(踊りは9:00~)
ただし団体によっては一般参加がNGのところもあるので要注意です!運行スタート前にハネト集合場所に行ったら、団体の方へ「参加しても良いですか?」と一言声をかけて、OKが出たら参加しましょう。
地元でないお祭りで突然の飛び入りは緊張するかもしれませんが、我こそはという方はぜひハネトデビューを目指してみては?詳細は青森ねぶた祭公式サイトの「ハネトの参加方法・ルール」のページから確認できます。
一生に一度の特別な体験ができる!最新型の観覧席とは?
2023年の青森ねぶた祭には、「プレミアム観覧席」が登場して話題となりました。ねぶたが運行する道路脇のパイプ椅子で観る従来の有料観覧席とは一線を画し、一人ひとりがゆったりとしたスペースの中で、くつろげる椅子に座って、目の前に迫るねぶたの大迫力を楽しめるというものです。
席の種類はVIPシート(最大8名・100万円)、ボックスシート(最大4名・20万円)、ペアシート(最大2名・5万円)の3種類。いずれの席でもこの日のためだけに用意された青森産食材をふんだんに使った食と、選りすぐりの地元のお酒を堪能しながら、ねぶたの運行が見られる正味1時間半だけでなく前後を含めた4時間たっぷり贅沢に過ごすことができます。
VIPシートでは、ねぶた師による祭りの解説付きで作品への想いや生のねぶた文化を知ることができ、食事や飲み物の提供などは専属のコンシェルジュが担当するので、より深いねぶた祭の世界に没入することが可能。
特に、座席が地上1.5mと高い位置に設えられているため、すぐ目の前の高さにねぶたが迫ってきて、ディテールまでつぶさに見ることができるのはこの席ならでは。立ち上がれば目の高さがちょうどねぶたの人形と揃うので、自分がねぶたになったつもりで祭りと街を眺められるのも、この席だからこそできるレアな体験の一つです。
2023年に実際にプレミアム観覧席を体験した方は、ご夫婦やご家族など大切な方と一生の思い出として楽しむ方や、とっておきの体験を、人混みを避けゆったり観覧できるからと高齢のご家族にプレゼントされた方も多数いらっしゃったそうです。
また、青森ねぶた祭の会場でも例外ではなく「遠い、少ない、待たされる」とよく祭りで問題になるトイレですが、プレミアム観覧席専用のトイレカーがすぐ後ろに用意されていたため、皆さんもこれには大満足だったといいます。
2024年のプレミアム観覧席については、まだ実施や詳細のアナウンスはありませんが、計画中とのこと。お祭りを楽しむだけではなく、空間や時間も丸ごと一生に一度の体験にしてくれる最新型の観覧スタイルに、ぜひ注目してみてはいかがでしょう。