一昨年、宮城県石巻市・牡鹿半島を中心に8月3日から約2ヶ月にわたって開催された、「アート」「音楽」「食」の総合芸術祭『Reborn-Art Festival 2019』は、国内外から延べ44万人以上が参加し、地元住民の協力によって地域の復興や振興に繋がる様々な循環を生み出し、大盛況にて幕を閉じました。
豊かな自然を舞台に、各エリアのキュレーターのもとで表現された魅力的なアート作品、地元の豊かな食材を活かして全国の指折りのシェフによって提供されたここでしか味わえないメニュー、「転がる、詩」「四次元の賢治 -完結編-」を始めとした音楽イベントなど、多彩なプログラムによってたくさんのかけがえのない出会いを生み出し、テーマでもある「いのちのてざわり」を実感してもらえる芸術祭になった。
目次
東日本大震災から10年、復興への思いと共に
いよいよ第3回開催となる2021年は、東日本大震災から10年という節目である。これまで同様に地域の内側からの復興と新たな循環を生み出すという目的の集大成を目指す。利己ではなく周りを思いやる心「利他」と流動性の中で新しい日常や本質を形作っていく想像力や関係性に改めて向き合う意味を込めて、テーマに『利他と流動性』を掲げる。本祭は2021年の夏と2022年の春、会期を2つの季節に分けて開催することが決定し、夏会期には国内外のアーティスト約25組が参加予定である。
小林武史が総合プロデューサーを担当し、2021年については、窪田研二(インディペンデント・キュレーター)、坂口千秋(アートコーディネーター)と共に企画チームを構成する。
新型コロナウィルス感染状況に対して柔軟な対応をすることと、これまでの夏の開催のみでは知ることの出来ない牡鹿半島の新緑が芽吹く春の美しい風景も体感してもらいたい、という想いから2つの季節での開催を決めた。
その他、開催についての詳細やエリア情報、参加アーティスト情報などについては、5月に発表予定である。
最新情報はオフィシャルサイトにて随時発表される。
■窪田研二/ KENJI KUBOTA
上野の森美術館、水戸芸術館現代美術センター学芸員を経て2006年よりインディペンデント・キュレーター。アートを通じて東日本大震災の被災地支援を目指す筑波大学「創造的復興プロジェクト」の主要メンバーとして活動(2012−2016)。社会においてアートが機能しうる可能性をアーティストや大学、企業などと協働し、様々な文化的フォーマットを用いて試みている。
「シンガポール・ビエンナーレ」(2008)、「横浜トリエンナーレ」(2008)、「Twist & Shout – Contemporary Art from Japan」(バンコク、2008-2009)、「六本木クロッシング−芸術は可能か?」(森美術館、2010)、「Future Bodies of Asia」(シンガポール、バンコク、ホーチミン、2017)、「Asian Art Biennale」(国立台湾美術館、2017-2018)、「Universal Nature」(ヘルシンキ、2017-2018)、「平昌ビエンナーレ」(平昌、2018)、「10年後のための芸術表現」(オックスフォード、2018)他、国内外多数の展覧会キュレーションや企画に携わる。
現在、学習院女子大学非常勤講師、川村文化芸術振興財団理事。
Reborn-Art Festival 2021-22 開催に向けて
東日本大震災から10年目の節目になる2021年、地域の内側からの復興に向けて、地域に新しいつながりや循環をつくる目的で始まった「Reborn-Art Festival」にとっても一つの節目となる年であり、心をこめて本祭を開催する。
しかし承知の通り、コロナウイルスによる社会情勢は先を見通せず、どのような形で今年の夏に本祭を実施できるのか、密な状況が発生しずらい屋外型のイベントとはいえ、現時点で確かなことを公開できる状況ではない。また、つい先日も東日本大震災の大規模な余震が東北を震わせたばかりだが、こうした自然の猛威に対して、畏れを持ちながら、一方で震災から得た生きる術=Reborn-Artをアーティストや地域住民と向き合いながら開催を目指していく。
間もなく震災から10年が経過する。多くの人々の力があり、被災地では前向きな変化の可能性が芽吹いている。地域のしなやかさや知恵を活かしながら、”ネガ”の中に必ずある”ポジ”を見つけていくという私たちの思いを、改めて確認していくプロセスになっていくと感じている。
2021年のテーマは「利他と流動性」である。
詳しいコンセプト趣旨やエリア情報、参加アーティスト情報などは、5月に発表する。
3回目の本祭となるこの度の大きな特徴として、2021年の夏、と、2022年の春、会期を2つに分けて開催することである。これは新型コロナウイルスによる色々な事態に柔軟に対応していきたいという考えと、少しでも密を避け、余裕をもって作品や地域の魅力を巡り、様々な出会いを楽しんでもらいたいという思いからうまれたアイデアである。
またこれまでの本祭は夏の牡鹿半島で開催していたが、春の新緑があざやかに芽吹く、道を歩くだけで元気をもらえるような、そんな美しい風景に誘いたい、という思いもある。
プレイベント「Reborn-Art ONLINE」
また、次の本祭に向けた橋渡しの企画として、プレイベント「Reborn-Art ONLINE」を実施している。
<鹿のゆくえ>
2つのオンライン企画のうちの一つ「鹿のゆくえ」は、「Reborn-Art Festival 2019」で牡鹿半島の鹿の猟師と食肉処理場を中心に、”鹿に導かれ私たちを見るとき”をコンセプトに集まり”集落”を形成した「小積エリア」の作家たちが織り成す表現である。小積エリアでは猟師と参加アーティストの集落的交流が会期が終わった後も自発的に続いていたが、鹿の視点から世界をみた作家たちがその後何をみて、何を表現しているのか。鹿、神話、小積の風景などを素材に、オフィシャルホームページを展示会場として作品世界を展開している。
「鹿のゆくえ」URL▶︎ https://www.reborn-art-fes.jp/shikanoyukue
<交信 – 声なき声を聴くためのレッスン>
もう一つのオンライン企画「交信 – 声なき声を聴くためのレッスン」では3回にわたり詩の朗読や歌、パフォーマンスなど、さまざまなプログラムを配信する。RAFの開催地である石巻を軸に日本そして世界の各地を結んで、霊や動物、自然、他者など、私たちが日常触れることのない、世界に生息するあらゆる「声なき声」に対し、アーティストたちの表現を通じて「交信」するためのささやかなレッスンは、先日第一回目が好評のうちに終了したが、3月にも二度の開催を予定している。
「交信 – 声なき声を聴くためのレッスン」URL▶︎ https://www.reborn-art-fes.jp/koshin
震災より10年が経ち、私たちはまた新しい自然の猛威を目の当たりにしている。
周りを思いやる心や、流動性の中で新しい日常や本質を形作っていく想像力や関係性。
この地域の人々と一緒に向き合ってきたことを改めて振り返りながらアーティストと一緒に表現、提案できる機会になればと願う。
Reborn-Art Festival 実行委員会 事務局
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【交信1:石巻 – それから】 配信終了
2月13日、「交信 -声なき声を聴くためのレッスン」の第一回「石巻―それから」の生配信が行われ、Reborn-Art Festival2019に参加した詩人の吉増剛造と音楽家の青葉市子を招いて2部構成で配信した。
第1部は吉増剛造。石巻市鮎川にある「島周の宿さか井」の一室で、2019年に制作し現在は常設作品として公開されている《room キンカザン》にて、夕闇に沈んでいく金華山をバックにリアルタイムで言葉を紡いできた。第2部は東京都内某所へ場所を移し、音楽家の青葉市子が登場。窓に描いたドローイング、クジラの骨等に囲まれた幻想的な空間の中で、石巻での思い出の曲を含む全10曲を演奏した。
配信の模様はアーカイブにて視聴できる。
アーカイブURL(YouTube Reborn−Art ONLINEチャンネル)▶︎https://www.youtube.com/channel/UCizyHnNkJjqYxGJbKfXbP-g
「交信」今後の配信スケジュール
URL▶︎ https://www.reborn-art-fes.jp/koshin
2021年3月26日(金) 19:00(予定) 「交信2:アーティビズムとセラピー」
[第1部] 対談:SWOON × 李俊陽 × 花崎草 / [第2部] パフォーマンス:花崎草
パフォーマンスアーティストであると同時にアクティビズムにも関わりながらさまざまな社会問題に取り組む花崎草が、アーティビズムとセラピーをテーマにNYのストリートアーティストSWOON、台湾のアーティスト李俊陽と、対談・パフォーマンスをおこなう。
2021年3月27日(土) 16:00(予定) 「交信3:私たちはどこに還る」
[第1部] 対談:志賀理江子 × 石倉敏明 / [第2部] パフォーマンス:山川冬樹
第1部では、震災後の生者と死者、人間社会と自然の関係について、写真家の志賀理江子と人類学者の石倉敏明の対談をおこなう。第2部では山川冬樹によるパフォーマンスをお送りする。
「Reborn-Art Festival」について
Reborn-Art Festival(リボーンアート・フェスティバル)とは、2017年7月22日(土)から 石巻・牡鹿地区を中心に51日間にわたって初めて開催され、豊かな自然を舞台に地元の人々と作りあげた、「アート」「音楽」「食」を楽しむことのできる新しい総合芸術祭である。
石巻・牡鹿地区は、東日本大震災で大きな被害を受けた地域の一つである。ここに、国内外の現代アーティストが訪れ、地域と触れ合いながらアート作品をつくったり、さまざまなスタイルの音楽イベントがあったり、日本各地から集まった有名シェフたちが地元の人・食材と出会い、ここでしか味わえない食を提供したりと、たくさんの「出会い」を生み出す場となる。その「出会い」がきっかけとなり、地域復興や振興につながる様々な循環を生み出すことを目指している。
東日本大震災から10年という節目の年に3回目を迎える2021年は、会期を8月11日(水・祝)〜9月26日(日)と、2022年4月23日(土)〜6月5日(日)の2回に分けて宮城県の石巻市街地と牡鹿半島をメイン会場に開催する。
「Reborn-Art Festival 2021-22」開催概要
名 称:Reborn-Art Festival 2021-22(リボーンアート・フェスティバル ニイゼロニイチ、ニイニイ)
会 期:2021年8月11日(水・祝)~ 9月26日(日)
2022年4月23日(土)〜 6月5日(日)
※会期中メンテナンス日(休祭日)を設けます
会 場:2021年:石巻市中心市街地、牡鹿半島(桃浦、荻浜、小積浜、鮎川、and more)
2022年:石巻地域
主 催:Reborn-Art Festival 実行委員会、一般社団法人APバンク
共 催:宮城県、石巻市、塩竈市、東松島市、松島町、女川町、
株式会社河北新報社、東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社(2019年実績・予定)
助 成:文化庁 国際文化芸術発信拠点形成事業
お問い合わせ:Reborn-Art Festival運営事務局 E-mail:[email protected]
オフィシャルウェブサイト:http://www.reborn-art-fes.jp/