毎年9月の第一土曜日に、茨城県下妻市で「タバンカ祭」が開催されます。
燃え盛る火の粉を、畳や鍋の蓋で消す、興味深いこの奇祭。この記事では、奇祭ハンターまっくさんによる2019年の現地レポートをお届けします。
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畳と鍋で炎をタバンカした後、松明が襲う?!
どうも。振りかかる火の粉は、振りかかる前に消しにかかりたい派、奇祭ハンターのマックです。今回は茨城県の秋の奇祭、タバンカ祭を紹介します。数ある松明系火祭りの中でも、幻想的な夜の松明の明かりを見ているだけでは済まされない、観客に文字通り火の粉がふりかかる火祭りはここ、タバンカ祭だけです。
タバンカ祭とは何なのか?
そもそもタバンカ祭(松明祭)は、600年の歴史を持つ、全国でも下妻市の大宝神社のみで見ることができる珍しい火祭りです。応安三年(1370年)に大宝寺別当坊の賢了院が出火した際、畳と鍋ぶたを使って火を消し止めたという故事を戯曲化したのが由来なんだとか。
またタバンカ祭りの火の粉には火の災いを防ぐ御利益があると言われています。詳細は下記の動画もどうぞ。
まずは冬瓜をゲットしよう!
新宿から車で1時間20分。下妻市大宝にある大宝八幡宮に着きました。元々勝負ごとに強い八幡様というだけでなく、「大宝」というありがたい地名もあって合格祈願や宝くじ祈願で人気の神社です。同地を訪れた際はぜひ、参拝していきましょう。
タバンカ祭開催前の様子。灯りが用意されています。
境内をウロウロしていたら速攻で蚊にさされました。多分、タバン蚊です(汗)。
くだらないことを言っていたら、時刻はすでに7時30分頃。祝詞奏上の後、冬瓜(とうがん)がド派手にバラまかれました。実はタバンカ祭は別名「冬瓜まつり」とも呼ばれ、白装束の氏子青年7名が、冬瓜を畳や鍋ぶたごと拝殿前に豪快にほうり投げるのです。
まかれた冬瓜をゲットすると御利益があるというので、結構な人気で取り合いとなっていました。なぜ冬瓜かというと「当時はこの時期に獲れる栄養価の高い食物だったからではないか」ということ。
畳と鍋でバタンバタンと火を消す?!
20時頃。大松明に轟轟と炎が点火されました。
大松明を使って焚火に点火されます。
いよいよタバンカ神事のハイライト。畳と鍋を使って火を消し止めんと、バタンバタンとやります。一説によるとタバンカ祭の名前の由来は、この時のバタンバタンという音が「タバンカ」と聞こえたところから来ているのではないかということです。
懸命な読者諸君ならお気づきでしょう。「畳はまだわかるけど、鍋のフタ、小さ過ぎない? 火消しの役に立ってる?」。
関係者の話によると、鍋のフタは昔はもっと大きく、数メートル先から転がし投げていたそう。まるで盾を転がすキャプテン・アメリカ(もしくはマンホールを転がす釈由美子)のようですね。
タバンカしている様子を下記の動画でもご確認ください。
毎年9月に茨城県の大宝神社で行われる「タバンカ祭」。畳と鍋で火を防いだ故事を模倣し、火の粉を浴びると火防の御利益があると言われておるぞ。松明を振り回す「奉仕者」は火の呼吸の使い手じゃな。#タバンカ祭 #好きな祭りの話をしよう pic.twitter.com/fjEEr8HgZS
— 奇祭ハンター Mac (@Mac40626899) April 14, 2020
ドドドドドドドと迫りくる火の粉を浴びよう!
秋の夜、神社の境内で白装束の男たちが松明と畳をもってこっちへドドドドドドドと走って向かってくる。うん。何ともシュールな光景です。
テクテクとこちらに歩いてきました。悲鳴をあげて逃げる子どもたち。ハハハ。たかが火の粉ぐらいで。かわいいものですね。
ふむ。た、確かに間近で見る松明の炎は迫力あるぜ。って、待てよ。この流れはひょっとして……。
ギャーーー。やっぱりこっちに向かって来たぁ!
ボボボボボボと振り回される松明。火拳?! 火拳なのか、これは?!
近い、近い、近い。揺らいでるよ、松明の炎がめっちゃ揺らいでいるよ。
ゼロ距離となったその刹那、偶然にも周りのストロボが光り、幻想的な一枚が取れました。
白装束の人と目が合った。時間が一瞬、止まっているような感覚に陥ちいりますね。
「あっぶね。もう少しで眉毛が全焼するところだったぜ!」なんてことはもちろんなく、程よい感じで松明が目の前を通り過ぎていきました。さすが、その辺は配慮が行き届いています。ちょっと火の粉を浴びたぐらい(それにしても奇祭ハンターをやっていると火の粉やら白い粉やらよく浴びるな)。
なお、この畳と鍋でタバンカしてから松明で火の粉をまき散らす一連の流れは全部で都合3回くり返されるので、「シャッター・チャンスを逃した」「火の粉を浴び損ねた」という方はぜひ2回目、3回目にもチャレンジしてみてくださいね。
タバンカ祭の舞台裏を知るには?
誰もケガすることもなく、タバンカ祭が無事に終了しました。背中が祭りの苦労を語っています。
打ち上げで振る舞わされた下妻市の地酒「紫煌」。下妻市に生息する国蝶オオムラサキが煌(きら)びやかに舞う様子をイメージして名付けられたとのこと。
オマケ。神事の終了後のシュールな一枚。
一種の度胸試しなのか、三島由紀夫の『潮騒』(「その火を飛び越して来い」)ばりに地元の子どもたちが焚火をジャンプして飛び越えてくるわ、飛び越えてくるわ。田舎育ちの私としては「昔、こういうのよくやったなぁ」とほっこり懐かしい気持ちになりました。