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こんな獅子舞見たことない!熱い釜から湯を振りまく全国でも珍しい「湯立獅子舞」とは?

更新日:2022/4/15 いなむ
こんな獅子舞見たことない!熱い釜から湯を振りまく全国でも珍しい「湯立獅子舞」とは?

箱根・仙石原に伝わる獅子舞は「湯立(ゆたて)獅子舞」と呼ばれており、珍しい民俗芸能を今に伝えている。獅子が修行をするように走り回ったり、お湯を振りまいたりするらしい。
このような獅子舞は日本全国を見渡してもなかなかあるものではない。ぜひ現地で拝見したいと思い、2022年3月27日に神奈川県箱根町の仙石原諏訪神社を訪れた。

湯立獅子舞とは?

湯立獅子舞は神奈川県箱根町の宮城野と仙石原に伝わる、疫病を払う民俗行事だ。地域の人々によって伝統的に受け継がれてきた舞いで、天下泰平や家内安全、五穀豊穣などの願いが込められている。獅子がお湯を振りまく場面が見どころで、お湯を浴びた人は1年間病気にかからないらしい。

また、2022年3月には国の重要無形民俗文化財に指定されたばかりだ。文化審議会答申の解説によれば、「湯立神楽と太神楽系の獅子舞が組み合わされた希少な事例 であり、神楽の変遷の過程や地域的特色を示して重要である」と記されている。

湯立獅子舞が始まった経緯

湯立獅子舞はいつどのように始まったのだろうか?仙石原の諏訪神社の境内の立て札によれば、安永5(1776)年に甲斐国郡内下吉田村(現富士吉田市下吉田)の住人である萱沼儀兵衛という人物が湯立神楽を伝えたことに始まる。この時、湯立神楽を演じたのが疫病封じの獅子であり、今日ではこれを湯立獅子舞と呼んでいる。

獅子が氏子に湯を振りかけるという行為がこの時からあったかは定かではない。珍しいのは獅子が湯を振りかけるという点にある。獅子が行者のように熱湯を神楽の法力によって冷まし、氏子の頭に振りかけるという熱冷ましの行為が無病息災に繋がるというわけだ。

独特の舞を見せる箱根・仙石原の獅子

それでは、当日の様子を振り返ってみよう。始まる前の諏訪神社の境内には、参道脇に獅子が幣束やクマザサとともに置かれており、荘厳な雰囲気を放っている。

3月27日の12時ごろ、湯立獅子舞は始まった。宮舞、平舞、劔の舞、行の舞、宮巡りの舞、釜巡りの舞、四方固めの舞という、7つの舞いが奉納された。

演目名と担当の方のお名前が木の板に書かれている。どの演目も多くは2人立ちから始まるのだが、後ろの人は胴幕の中に入らずその裾を持つ。笛や太鼓は左のほうに控えている。

1人立ちの時もある。その際はシシの胴幕の部分を腰にくくりつけ後ろで結び、動きやすいような形で舞う。獅子が2本指を高く振り上げ、円を描くように回る仕草も見られる。

それから獅子は2人立ちに変わる。笛や太鼓のリズムがどんどん早くなっていき、獅子は荒ぶるように激しい動きが多くなる。右に立つ人は塩振りで、獅子が舞っている周囲に塩を振る。

剣を持つか鈴を持つかなど、演目によって少しずつ違いがあるものの、どの演目も基本的な構成は似ていた。胴幕ありの2人立ちで後ろの人が胴幕に入らないところから始まり、胴幕を巻き付けた1人立ちに変わり、胴幕ありの2人立ちで締めくくられる流れで行われることが多かった。

クマザサを振る獅子!お湯をかぶると健康に

後半に差し掛かり、釜巡りの舞いの時にクライマックスを迎えた。ついに獅子が結界の中に入り、大釜の四方を回っていく。これを「湯立ての行」という。

途中、なんと釜の下に燃え盛る火を踏みつけるような動作もあった。しかし、痛みは全くないという。キビキビとした無駄のない動きの中に、邪心が住み着いていないからであろう。

それからクマザサを手にした獅子がグツグツと湧いているお湯の中にそれを浸してかき回す。ここからは「湯ざましの法」である。

それをブワッと引き上げると、たちまち白い湯気が立ち込めた!その場に一瞬、「ここはどこだろう?」と思うほどに、次元の狭間を生きるような感覚を覚える。呪文を唱え、かき回し、振り上げる。その繰り返しの中で、溢れるお湯は足に降りかかっても全く熱くないという。

湯釜から引き上げたクマザサを持ち小走りで移動して、参道脇で神に祈りを捧げることをまずは繰り返す。その後に、氏子や囃子方などに向けてお湯を振りまいていく。皆頭を下げて、その恩恵に預かる。一年、健康に過ごせますように。

仙石原の諏訪神社における湯立獅子舞は、3月27日の12時から始まり、14時半ごろまで行われていた。地元の氏子の方々を中心に多くの方が訪れており賑わいを見せた。

今年3月に国の重要無形民俗文化財に登録されたこともあり、「おめでとうございます」と受付のテントで挨拶をされている方も多く見られた。

釜巡りの舞から四方固めの舞まで、こちらの動画もぜひご覧いただきたい。

湯立獅子舞が見られる日程

今回、湯立獅子舞を拝見していて、湯気が沸き立つ瞬間や獅子が荒ぶる時に、その場をまるで異世界に変えてしまうような力を持っているようにも感じられた。「熱を冷ます法力を持つ」という感覚も頷ける。箱根は古代から山岳信仰の霊地とされており、修験者たちによって祈りが捧げられてきた場である。その感覚が研ぎ澄まれていった一方で、現代の湯立獅子舞が脈々と繋がれてきたのだろう。

箱根仙石原の湯立獅子舞は3月27日に諏訪神社で行われるものだけでなく、5月5日には公時(きんとき)神社でも見ることができる。また、箱根宮城野では7月15日に諏訪神社でも奉納される。ぜひ他の機会にも湯立獅子舞をご覧いただきたい。

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
獅子舞マニアです。ライターやカメラマンをしています。趣味は、獅子舞の鼻を撮影することです。その他クレイジーな祭りにも潜入します。

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