ひなまつりといえば、雛人形にひし餅、桃の花。そしてもう一つ、お楽しみは「ひなあられ」です。カラフルでほんのりと甘いひなあられは、子どもから大人まで楽しめる可愛いお菓子。この記事では、ひなあられの由来や意味、地域ごとの違いなど、ひなあられの基礎知識をお届けします。
ひなあられの由来は?ひなまつりになぜ食べる?
ひなまつりは元々、中国から伝わった五節句の一つ、3月3日の「上巳(じょうし)の節句」で、紙の人形などに穢れを移し川に流して邪気を祓う行事でした。そこへ、平安貴族の女性たちが行なっていた「ひいな遊び」という人形遊びが結びつき、後々のひなまつりになっていったとされています。
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ひなまつりが女の子のお祝いとなり、立派なひな人形が飾られるようになったのは江戸時代から。ひなあられが食べられ始めたのは明治以降といわれますが、残念ながらその由来ははっきりとは分かっていません。
貴族が、ひいな遊びでひし餅を砕いて煎ったおかきを食べていたのがひなあられになったという説のほか、米を煎った縁起物が元になっているという説や、お釈迦様の命日にお供えする菓子が由来という説もあります。
しかし、いずれにしろ見た目が華やかで食べやすいひなあられは、現在に至るまでひなまつりに欠かせないお菓子として定着しています。
関東と関西で違う?ひなあられの色と形と味
ひなあられは、実は東日本と西日本では形も味も異なります。
東日本のひなあられは、米に圧力をかけて膨らませたいわゆる「ポン菓子」で、おもに米粒形です。江戸時代に「爆米(はぜ)」という呼び名で流行したのをきっかけに、ひなあられの定番になったといわれています。砂糖でコーティングした甘い味付けで、子どもから大人まで広く親しまれてきました。
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一方、西日本のひなあられは、京都の涌蓮上人(ゆれんしょうにん)という僧侶が、山籠もりに持っていくため餅から細かいあられ状のかき餅を作ったのが始まりという説があります。それが今のひなあられにつながり、大きさは直径1㎝ほど、形はコロコロとした球形で、味はたまり醤油や素焼きの塩味、海老、青海苔など塩気のある味が主流です。
名前は同じでも、形から味まで違うのはとても面白いですね。
ひなあられの色のもつ意味とは?
ひなあられといえば、優しい色合いも魅力のひとつです。緑・桃・黄・白などが定番カラーといえそうです。ひなあられの色は4色か3色と決まっており、それぞれに意味があります。
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4色の場合は四季を表し、1年を通じて健康で幸せな日々が送れるようにという願いが込められています。緑が春、桃が夏、黄が秋、白が冬をそれぞれ象徴しています。
3色の場合は緑・桃・白でひし餅と同じ色合いです。意味は緑が健康、桃が魔除け、白が清浄とされており、「健やかな成長を祈る」という意味が込められています。
ちょっと変わったひなあられ
ひなあられは、東西で形や味が大きく違っていますが、さらに地域によっても異なる場合があります。ここでは、そんな「ご当地ひなあられ」を2つご紹介します。
鳥取のひなあられ「おいり」
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「おいり」は、鳥取県因幡地方に古くから伝わるお菓子で、ひな祭りのお祝いに食べられてきました。米を「炒る」ことが名前の由来になっています。昔から因幡地方の家庭では、食べきれなかったご飯を無駄にしないように洗って干し、その米を炒っておいりにしてきました。炒ったお米は水飴を加えて丸い形にします。
鳥取県では人形を川や海に流すことで厄を祓う「流しびな」の伝統行事が有名です。「もちがせの雛送り」は県の無形民俗文化財にも登録されています。おいりは、昔ながらの伝統を大切に守る、鳥取らしい素朴な味のひなまつりのお菓子です。
高知版ひなあられ「花きび」
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「花きび」とは、淡い色と優しい甘さが特徴の、ポップコーンのようなお菓子です。つまり、定番のひなあられのようにお米や餅から作られるのではなく、とうもろこしが原材料になります。
高知のひな祭りでは、ひなあられといえば花きびが定番です。「高地版ひなあられ」や「高知に春を呼ぶお菓子」とも呼ばれ、母娘をつなぐ絆のシンボルとしても人々に親しまれています。
まとめ
今回は、ひなまつりに欠かせないお菓子「ひなあられ」についてご紹介しました。何気なく食べているひなあられにも、歴史や地域による形と味の違いなどがあるものですね。
また、色には意味があって子どもの健康や幸せへの願いが込められていることも分かりました。今年のひなまつりは、色とりどりのひなあられに込められた昔の人の想いに共感しながら味わい、楽しんでみてはいかがでしょうか。