6月16日は和菓子の日。西暦848年、仁明天皇が16にちなんだお菓子や餅を神前に供え、疫病を避け、健康招福を祈ったことに由来する記念日です。今年の和菓子の日は、浅草に本店を構える、芋羊羹で有名な舟和の色とりどりのあんこ玉に注目。子供から大人までワクワクする、目にも楽しいお菓子を実食し、感想をお届けします。
芋羊羹で有名な舟和本店へ
美味しい和菓子を求め、梅雨の始まりの少し曇り空の中、浅草にある舟和本店へ。舟和は、明治35年創業の100年の伝統あるお店、浅草はじめ関東各地に14の直営店、そして全国各地に販売店をもちます。銀座線浅草駅から雷門を眺め少し歩いて、右へ曲がるとレトロなたたずまいの舟和本店が見えてきます。
2階は喫茶店になっていて、ショーケースの中に芋パフェやくりーむあんみつが。
創業者小林和助が高級品だった煉羊羹のかわりに、庶民が食べられるように芋羊羹を考案。また、明治36年には「みつ豆ホール」を開店し、子供のおやつだったみつ豆にフルーツを盛り付けてはじめて喫茶店で提供したのだそう。庶民にも和菓子に広く親しんでもらう工夫をたくさんされていたのがよく伝わってくる店舗で、芋アイスの提供や、お菓子のガチャガチャなどもあります。
この日も、年配のお客様が中で甘いものを楽しんでいました。
あんこ玉実食 お味はいかに?
一階の売り場であんこ玉9個入り777円(税込)を購入。箱をあけると直径3センチほどのつややかで色とりどりのあんこ玉が9個入っています。つやつやで色鮮やかなインスタ映えするビジュアル。
一個ずつ取り出すと透明なかんてんの中にみっちりとあんこがつまっています。
まずは小豆を実食。外側のかんてんはつるりと口の中に滑り込み、全体としてはこしあんのなめらかさが際立ちます。甘さは強いですが、後味はさっぱり。程よいサイズで二口ほどでぱくり。熱い日本茶によく合います。
続いて白いんげん。和風の自然な甘みにほっこり。見た目でも白さがかわいらしい感じです。
続いて茶色い玉。こちらはコーヒーということですが、かなりはっきりと、思った以上にコーヒーの味がしてびっくり。炭火焙煎を思わせる香ばしい風味の中に、ちょっとコーヒー牛乳を思わせる懐かしさも感じられて、驚きとともにおいしくいただきました。
まんなかの黄色い玉はみかん。こちらは甘酸っぱく、女子受けしそうな味わい。お月様のような色合いも素敵です。
続いて黄緑色の抹茶。こちらは新緑の季節を感じる抹茶風味が口いっぱいに広がります。安定のおいしさ。
最後にいちご。こちらは苺ジャムとあんこがまじりあったような果実味があります。粒粒感が少しひろがる斬新な味わい。
個人的に、一番おいしさと工夫が感じられたのはコーヒー、期待を上回るおいしさでした。和菓子でこんな味が出せるのか、という驚きもありました。
6月16日は和菓子の日 その由来とは?
西暦848年、仁明天皇がご神託をうけられ、6月16日に、16にちなんだ菓子や餅を神前に供えて、健康招福を祈り、「嘉祥」と改元しました。嘉祥とは「めでたいしるし」という意味、ここからこの日に和菓子を食べて疫病をはらう「嘉祥」という行事がはじまりました。鎌倉時代には、6月16日に後嵯峨天皇が即位前に通貨16枚で御供えの菓子などを求めて献じ、即位後もこれを続けられ、また室町時代には、朝廷で主上に「嘉祥の祝」の菓子を差し上げました。そして江戸幕府は、この日、大名、旗本などに大広間で菓子を賜り、これを「嘉祥頂戴」といいました。民間でも、16文で菓子や餅16個を求め食べるしきたり、「嘉祥喰」があり、「嘉祥の祝」は、健康招福を願うおめでたい行事として受け継がれ、明治時代まで盛んに行われてきました。この『嘉祥の日』を全国和菓子協会が、昭和54年に「和菓子の日」として復活させました。(参考:日本和菓子協会ホームページ、日本あんこ協会ホームページ)とても由緒正しい記念日なのですね。
今年の6月16日は、健康招福を祈り和菓子をいただくのはいかがでしょうか?
浅草の夏の風物詩 浅草寺ほおずき市
舟和本店のある浅草、浅草寺ではこの夏7月9日、10日に四万六千日・ほおずき市が開催されます。浅草寺の功徳日野中でも最大の、46,000日分の功徳があるとされている日にほおずきの市が立つようになったのは明治時代から。
「ほおずきの実を水で鵜呑み(丸のみ)すれば、大人は癪(なかなか治らない病気)を切り、子供は虫気(腹の中にいると考えられた虫による腹痛)を去る」という民間信仰に寄ったもの。この二日間だけ浅草寺から「雷除守護」のお札も出され、また様々な出店が立ち並び、たくさんの人でにぎわいます。
色鮮やかなほおずきを眺め、おいしい和菓子をいただいて、楽しく江戸情緒を感じてみてはいかがでしょうか?
おいしい和菓子でコロナを払い、健康に
コロナウイルス感染という事態に見舞われている私たちにとっても、仁明天皇が和菓子を神に供えて、健康招福を祈った気持ちはとても身近なものに感じられます。そして今回いただいた舟和のあんこ玉には、和菓子の伝統、文化を受け継ぎながら、多くの庶民に親しまれるものに工夫、改革していく心意気が感じられました。楽しんでもらおう、喜んでもらおうという強い気持ちが感じられるのです。コロナ感染がまだ完全には終息しない中、古来の人々の祈りに思いをはせて、和菓子をいただくのはいかがでしょうか?