季節も徐々に春めいてきて、暖かい日々も多くなってきましたね。春を過ぎると夏本番!浴衣姿でお祭りや花火に出かけるシーズンが近づいてきます。特に女性の方や、流行ファッションに敏感な男性の方も、夏はどんな浴衣でお洒落をしようかと、様々な想いを廻らせているのではないでしょうか。
今回は、今や日本の夏服の定番にもなった「浴衣」のルーツから、浴衣で楽しめるイベントや今年の浴衣トレンドまで盛りだくさんの内容をお届けします!
浴衣とは
では、そもそも、「浴衣」とはどのようなものなのでしょうか。その知られざる起源から、着物との違い、色やデザインのトレンドまで、ご紹介いたします。
元々は貴族の薬風呂用だった?!
浴衣の最古の起源は諸説あります。中でも、奈良時代の天平期に聖武天皇の夫人である光明皇后が建てた施薬院(せやくいん)の蒸し風呂で、貴族が汗取りのため身に着けた湯帷子(ゆかたびら)が有力な説です。「かたびら」は、「袷(あわせ)の片ひら」の意味で、裏をつけない衣類のことです。近世以降、銭湯が普及して裸体で入浴するようになり、浴後に着る木綿の単(ひとえ)を浴衣というようになり、庶民まで普及しました。
明治になると、湯上りにだけではなく寝間着としても着られるようになりました。昭和中期までは浴衣は寝間着と考えられていたため、浴衣姿でのホテルのロビーへの立ち入りはマナー違反だったそうです。
浴衣が夏の外着になった所以は、江戸時代の頃。短期な江戸っ子が浴衣で入浴したのち、風呂屋の涼み場で着ていた浴衣をそのまま外出着として着用するようになりました。通気性の良さや着やすさから盆踊りや花見で浴衣を着て出かける華やかな文化が誕生しました。
タコと女性の組み合わせといえば、こんな面白いファッションも。お風呂あがりの女性が着ている藍色の浴衣には、大きなタコが描かれています。まるで頭を掻いているような仕草ですね。太田記念美術館は3/31まで臨時休館。自宅でも楽しめるような、心がなごむ浮世絵を紹介しています。 #おうちで浮世絵 pic.twitter.com/ddFd2T5DLx
— 太田記念美術館 (@ukiyoeota) March 19, 2020
着物との違いは?
浴衣は着物の一種とされ、お祭りや花火大会など夏のイベントのときに着るもの、というイメージです。昭和までは、着物はフォーマルなもの、浴衣はカジュアルなもの、と違いが認識されていました。しかし令和の今、その境界はほとんどありません。現代では夏の遊び着として着られることが多く、帯や履物も規律は緩く、基本的に自由です。
では素材には違いがあるのでしょうか?着物に使われる素材は絹・木綿・ウールなど厚みがあり上質でしっかりした生地で、裏地もあって透けたりはしません。夏用の薄手の着物というものもありますが、下には肌襦袢(じゅばん)や長襦袢を着て、足袋(たび)を履きます。
浴衣に使用される素材は、綿・麻・ポリエステルなどです。さらりとしたテクスチャで羽織ったときも空気感や透明感があります。丈夫で洗濯に強く、安価で発色が良く、また通気性にも優れ、暑い夏でも涼しく着られます。
公式な場面に浴衣は着て行くことはマナー違反とされています。結婚式や祝賀会のようなお祝いの席や、初詣や成人式、不祝儀でも、着物を正装として着用するのが一般的です。さらに、浴衣と着物は、衿の合わせ方はどちらも右前ですが、着付けの手間や時間は相当に異なります。
このように、浴衣と着物は同じ日本の伝統ファッションではありますが、多くの異なる点があるのです。
最近の浴衣のトレンド
近年の浴衣のトレンドでは、アート風から可愛いものまで、クラシカルでロマンティックな色彩と柄が人気のようです。また気軽に着ていけるファッション性の高さが浴衣選びのポイントにもなります。では、最近の浴衣のトレンド色、柄を男女別に例をご紹介します!
【女性:色】
・白色のイメージは、「祝福」「純粋」「清潔」「明るい」「平和」などがあり、信頼感や好感を与えられます。また、白色の浴衣からは柔軟性や軽快さがあり年代も選ばないので、デザインによっては永く愛用できます。
・水色は涼しげな色の代表的な存在です。水色は「さわやか」「涼しい」「透明感」「夏」「冷静さ」などのイメージがあります。瑞々しい感覚なので、若い世代向けですが、白を基調に水色の柄入りの浴衣なら、幅広い年代の女性に合うでしょう。また水色は、薄紅色よりさりげない女性らしさをだせるのも特色です。
・藍色・紺色の浴衣は、伝統の藍染の浴衣にも通じ、トラディショナルにコーディネートしたいときにおすすめです。
【女性:柄】
・矢絣(やがすり)柄は、矢羽を幾何学的に図案化した文様です。射た矢が戻ってこないことから、女性の結婚に縁起が良いとされます。
・椿柄は、高貴でミステリアスな魅力が愛されてきた和の華をあしらっています。浴衣に使われると、夏にあえて涼しげな冬の花を選ぶ粋な女性の感じになります。
・紫陽花(あじさい)柄は、雨を連想させるので涼しいイメージです。最近は桜柄の浴衣もあり、夏の時期以外の花の柄が入った浴衣も人気です。
・撫子(なでしこ)柄は、撫でてしまいたくなる可愛らしい夏の花をモチーフにしています。花言葉は、純粋。色彩との上手な組合わせで、愛らしいだけではない高い気品のあるレディの印象を与えられます。
隅田川花火大会、見事に晴れましたね!後輩たち、大活躍でした!
私も、今宵は浴衣を着てプライベートで楽しみました☆
30代でも似合うようにと、紺地の撫子柄の浴衣です^ ^ pic.twitter.com/jNeozVjgiG— 相内優香(テレビ東京アナウンサー) (@yuuka_aiuchi) July 27, 2019
夏着物の種類や選び方とは?カジュアルな浴衣からワンランクアップ!
【男性:色】
・藍色・紺色は男性用浴衣でも、最もオーソドックスな色です。夏の空や海を連想させる鮮やかな青に近いものから、和の粋なスピリットを感じさせる濃紺まで、微妙なニュアンスの違いがあります。他の帯や小物とも組み合わせやすいこともメリットです。
・黒色はすっきり引き締まって見せる効果があります。墨の色をイメージさせることからか、多くの日本の文人たちに愛用されてきました。白い帯と組合わせることで、夏の光と影の強いコントラストの中でも、印象を鮮やかに映えさせることができます。重さが気になってしまう場合は、グレーに近いものを選ぶと良いでしょう。
・白色は誠実さや清潔感を与える色です。男性では特に大切にしたいポイントです。
【男性;柄】
・古典柄には、市松(格子)模様・縞・十字などがあります。市松は粋な感覚、縦縞はすらりとシャープなライン、十字は奥深い知性を演出してくれるでしょう。
・遊び心あふれるポップな柄には、動物モチーフなどがあります。虎や龍など男らしいデザインから、蝙蝠(こうもり)のような隠れた定番までバリエーションはさまざまです。
・敢えて無地という選択もあります。自由度が高いので、着こなすためには実は上級者向けなのですが、それだけ独自の個性を発揮する余地があるかも知れませんね。
浴衣を着て楽しめるイベント
誰でも浴衣姿で楽しめるイベントを、3つピックアップしてみました。浴衣を身にまとってゆったりとした時間が流れる空間でおひとり様、友人、恋人、家族と素敵な思い出を作ろう!
幻想的な時間の流れを感じよう!「FireflyFantasy」
自然豊かで広大な日本庭園を有する、東京・目白のホテル椿山荘東京。庭園内から湧き出る天然水に育まれたゲンジボタルが、初夏の良夜を幻想的に彩ります。漆黒のキャンバスに柔和で優しい光の軌跡を描いて飛び舞う蛍は、古くから日本の貴人にも庶民にも深く愛されて来ました。庭園にはどなたでも無料で自由に入れますので、浴衣姿で足を運んでみてはいかがでしょうか。
夜の美術館・博物館は神秘的!「サマーナイトミュージアム」
夏休み期間中の金曜夜は、都立の美術館・博物館(東京都江戸東京博物館・東京都庭園美術館・東京都現代美術館・東京都写真美術館・東京都美術館)が21時までオープンしています。
ミニクラシックコンサートなどのイベント、カフェやショップでの特別サービス、さらに17時からの学生無料特典など、夏夜だけのクールな特典がたくさんあります。古今東西の芸術作品に囲まれながら、和の感性と技術が冴える美しい浴衣をまとって、ちょっとミステリアスな知の冒険を楽しんでみませんか?
※2020年の開催については詳細が発表されておりません。(2020年4月8日時点)事前に開催情報をご確認の上、お出かけください。
1000基の灯籠によるライトアップ!「江の島灯籠」
湘南江の島の夏の夜を幻想的に演出する「江の島灯籠」。島内の江島神社と対岸の龍口寺が日本伝統の灯りでライトアップされます。サムエル・コッキング苑では、江の島の成立と歴史を天女と五頭龍(ごずりゅう)の伝説で表した絵巻物語「江の島縁起」を、美しい影絵灯籠で再現。
さらに、昔ながらの影遊びを体感できるスポットや、江の島に伝わる恋物語を影絵と映像で綴った光と音のライブパフォーマンスも催されます。浴衣・甚平で江の島サムエル・コッキング苑に入場すると素敵なプレゼントも。
※2020年の開催については詳細が発表されておりません。(2020年4月8日時点)事前に開催情報をご確認の上、お出かけください。
ここまで浴衣を着て楽しめるイベントをご紹介しましたが、他にもおすすめのイベントやお祭り、そして花火大会もたくさんあります。紹介している記事もありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
浴衣で行きたくなる花火大会5選!浴衣での鑑賞が楽しくなるサービス
オススメの浴衣ウォーク
浴衣を着て歩きたい和を感じるスポットを、3つご紹介します。浴衣姿で歩を進めていると歩くスピードが自然とゆっくりになり、普段見えない景色や歴史が感じられるかも?
古い町並みを歩く。ウォーキングツアー
「飛騨高山古い町並みウォーキングツアー」は、歴史的な街並みと文化を色濃く残す岐阜県高山市の国選定重要伝統的建造物群保存地区を、地元のベテランガイドさんによる詳しい解説付きで歩くツアーです。桜・柳の並木に朱色が綺麗に写真映えする中橋や、殿様を大火から救った名馬を祀る山桜神社、奈良時代からの歴史を持つ飛騨国分寺など、日本の古き良きスピリットが今も生きていることを歩きながら感じられます。ぜひ、浴衣で浪漫散歩を楽しみましょう。
武士の歴史に触れる。和文化体験散歩
サムライの古都であり、明治以降は文人や芸術家たちにもこよなく愛された鎌倉。山と海に囲まれたこの天然の城は、今なお多くの伝統建築が残る由緒ある街です。東京から近いこともあって、外国のお客さんもいっぱい。源氏の守護神・鶴岡八幡宮の参道である小町通りには、着物・浴衣レンタルのお店も並び、若い男女の浴衣姿が通りを鮮やかな色で染めています。和の国の誇り高き精神文化溢れる街の空気を、浴衣で全身に体感してみませんか?
浴衣との相性抜群!温泉街歩き
自然湧出量日本一、日本を代表する名湯の一つである群馬県・草津温泉。開催中の「草津温泉のドレスコードは浴衣でしょ!浴衣de街歩き」キャンペーンでは、浴衣を着て参加店舗で「草津温泉のドレスコードは浴衣でしょ!」を見て来たと伝えれば、色々な特典が受けられます。老舗の「御座之湯(ござのゆ)」では、600通り以上の組合せから選べる浴衣レンタルサービスも。江戸時代には東の大関にも譬えられた温泉街で、浮世の塵埃をさっぱり洗い流した後は、清新な気分で華麗に通りをぶらぶらしてみては?
草津温泉のドレスコードは浴衣でしょ!浴衣de街歩き特典の詳細はコチラ
ここまでウォークイベントをご紹介しましたが、浴衣で歩いていると心配になるのが着崩れです。しっかり対策すれば問題なし!ぜひこの夏や浴衣で楽しんでくださいね。
浴衣の失敗談8選!着崩れや下駄の痛さとサヨナラ出来る?解決策をご紹介!
浴衣が映えるお出かけフェスティバル
やっぱり浴衣といえばお祭りですよね。ここからは浴衣で参加したい日本伝統のお祭りを3つご紹介!
伝統のお祭り行列。浴衣を着て、京の光を観よう!
初夏の爽やかな京都を典雅に彩る葵祭(あおいまつり)は、約1,500年の悠久の歴史を有します。ハイライトは、天皇の使者である勅使が下鴨・上賀茂両神社に参向する道中の「路頭の儀」です。正装束の貴人たちの行列が京都御所より出発し、王朝絵巻さながらに通りをパレードします。中でも、十二単をまとい牛車に乗って登場する斎王(さいおう)代と、続く女人列が華麗です。
※2020年は『路頭の儀』(行列)『斎王代列禊の儀』中止。下鴨神社及び上賀茂神社における葵祭『社頭の儀』等関連行事は、神社関係者のみで行われます。詳しくは下記開催情報をご参照ください。
露店やステージ演出が楽しめる「ゆかたまつり」!
天空に白く気高くそびえる世界遺産・国宝姫路城、それを守護する長壁(おさかべ)神社の例祭にちなんだ「姫路ゆかたまつり」。この長壁神社が祀るのは、天武天皇の皇子刑部(おさかべ)親王とその王女。しかし近世の姫路築城以降、城内にあるために庶民は参拝できなくなりました。
その後、江戸享保期に姫路藩主となった榊原政岑(さかきばらまさみね)は風流大名として浮名を流したことが将軍吉宗の怒りを買い、越後高田に転封を命じられますが、その前に政岑は庶民も参拝できるように長源寺境内に社を移し、夏至の日に祭りを開催しました。この際に浴衣姿での参加を政岑が認めたことが、「ゆかたまつり」の起源であり、日本において夏祭りに浴衣を着る風習の初めとされます。
姫路ゆかたまつりでは、神前に回り灯籠が奉献され、千軒もの露店が町中を埋め、「子どもゆかたパレード」や「ゆかたファッションショー」なども賑やかに行われます。また期間中浴衣着用で姫路城が入場無料になるなどの、様々な特典もあります。
※2020年の開催については詳細が発表されておりません。(2020年4月8日時点)事前に開催情報をご確認の上、お出かけください。
江戸城の守り神 浴衣踊りで平和を祈る
築城以来の江戸城鎮守である東京・永田町の日枝(ひえ)神社。江戸三大祭の筆頭として、また京都の祇園祭・大阪の天神祭と共に、日本三大祭に数えられています。その盆踊り「納涼大会」では、奉納提灯の神秘的な光が境内を煌々と照らし、勇ましいリズムの和太鼓の音も豪勢に響きます。初心者でも楽しめる歌踊りと、並ぶ多くの夜店には、浴衣姿の人もたくさん参加します。
2020年は残念ながら中止が決定していますが、次回以降開催された折には、思いっきり浴衣で盆踊りを楽しみたいですね。
念願だった赤坂・日枝神社の盆踊りに参加。東京の盆踊りの幕開けということで、「明けましておめでとうございます」という挨拶も。贅沢にもKさんご夫妻に導かれながら楽しく踊れて、それはもう大満足な時間でした。 pic.twitter.com/JSNYSQ8wia
— 藤原英明 / H. Fujiwara (@FujiwaraHideaki) June 17, 2019
まとめ
一口に浴衣と言っても、歴史から素材、デザインまで、豊かな世界が広がっているのですね。また、お祭りなどのイベントや素敵なスポットなど浴衣姿が綺麗に映えるチャンスも、日本全国にいっぱいあることも分かりました。もちろん、ここにご紹介したのはほんの一例に過ぎません。ぜひ、ご自身で、また大切な人と一緒に、日本の夏を彩る浴衣の楽しみを、さらに開拓してみてくださいね。