国の重要無形民俗文化財である秋田県羽後町の「西馬音内(にしもない)盆踊り」。この祭りのメイン会場の中心に、築180年の歴史的商家をリノベーションした「泊まれる文化交流施設」として2025年4月に開業したのが「盆宿U」です。同施設は、その絶好の立地と歴史ある空間を活かし、宿にいながら特等席で祭りを楽しむ「プレミアムな観覧体験」の造成に挑戦しました。地域の文化資源を高付加価値な観光コンテンツへと昇華させるヒントがここにあります。(写真提供:盆宿U)
<この記事のポイント>
・歴史ある祭りを、宿泊・食事・解説を組み合わせた高付加価値な文化体験へ
・プレミアム観覧席の企画から販売戦略まで伴走支援
・地域住民の誇りの醸成とインバウンド誘客の可能性を広げる新たな挑戦
宿泊施設と祭りで高付加価値な体験

盆宿Uは、築180年の母屋と4つの蔵を擁する歴史的な商家をリノベーションし、宿やサウナ、コミュニティスペースを備えた「泊まれる文化交流施設」として2025年4月に秋田県羽後町で開業しました。施設が位置するのは、国の重要無形民俗文化財にも指定されている日本を代表する伝統芸能「西馬音内盆踊り」のメイン会場である本町通り沿いという絶好の立地です。この地の利を最大限に活かし、宿にいながら特等席で祭りを楽しむことができる、特別な宿泊・観覧体験の構想が立ち上がりました。

盆宿U代表の京野健幸さんは、そのきっかけをこう語ります。「オマツリジャパンが手掛けた、青森ねぶた祭での100万円観覧席の事例を知ったことが最初のきっかけです。あの取り組みを見て、私たちの施設でも同じように祭りの歴史や文化を深く理解できる上質な体験を提供できないかと挑戦してみたくなったのです」。
しかし、その構想を形にするにあたり、一番の課題となったのが、「どう販売するか」というもの。「SNSやWeb広告での告知は検討していましたが、予算には限りがあります。一般的な宿泊プランとは異なり、伝統文化に関心を持つ限られたターゲット層に対してどのようにアプローチし、かつ、高単価なサービスの魅力を的確に届ければよいのか、販売戦略を描き切れずにいたのです」(京野さん)。
知見の共有と二人三脚の販売戦略

京野さんは、ねぶた祭の事例を手掛けたオマツリジャパンの問い合わせフォームから直接相談を寄せました。お祭りの高付加価値化の先進事例として、ぜひ参考にしたいという思いから始まったこの問い合わせが、オマツリジャパンとの伴走のきっかけとなります。
造成されたプレミアム観覧体験は、歴史的商家の空間を活かした2種類のプラン。
初年度となる2025年は、2階VIP席での宿泊付きプレミアム観覧体験を最高50万円で設定。秋田県にかほ市のフレンチの名店「Remède nikaho」による地元食材のフルコースディナーや文化解説を組み合わせた特別な観覧体験として立ち上げました。また、1階席ではビュッフェスタイルの食事を楽しみながら観覧できるプラチナプランも用意し、施設の特性を活かした複数の体験設計に挑戦しました。
2年目となる2026年は、初年度の反響を踏まえて商品内容をさらに磨き込み、VIPプランは最高55万円に設定。プラチナプランでは食事を重箱フレンチへと進化させるなど、より上質な体験として再設計しました。いずれのプランにも蔵サウナやこだわりの朝食が含まれ、祭りと地域の文化を丸ごと味わえる極上の体験設計となっています。

これら観覧プランの基盤は京野さんが主体となって考案したものです。オマツリジャパンは、盆宿Uが描く体験の実現に向けて、ねぶた祭の高付加価値観覧席を造成した際の経験や知見を惜しみなく提供し、全体プロデュースの視点から提案を行いました。「ちょうどその夏、オマツリジャパンが秋田竿燈まつりでもプレミアム観覧体験を立ち上げたところで、実際に現地を視察させていただいたのは、とても参考になりました」(京野さん)。

また、最も大きな課題であった販売戦略について、初年度は立ち上げから短い期間での実施となったことから、祭り専門の旅行商品ECサイト「オマツリジャパンのお店」での販売や、祭りに感度の高いフォロワーを持つオマツリジャパン公式SNSでの情報発信などの支援からスタートしました。そして、2年目となる2026年の取り組みでは、より早期から準備期間を確保し、旅行会社や富裕層向けルートなどへ販売チャネルを大幅に拡大。売れ行きも好調だそうです。「販売にあたっては、説明に『オマツリジャパンの名前を入れたい』という旅行会社からの要望があったのです。実績と信用力の面でも大きな支えになりました」(京野さん)。

地域に広がる誇りとインバウンドへの展望

最高50万円というプレミアム観覧席の価格設定に対し、当初は地域の人々から大きな驚きの声が上がっていたそうです。盆宿Uはデザイナーの手になる洗練された外観の建物。できた当初は、近隣の人から「あそこはどういうホテルなのだろう」と遠巻きに見られている面があった、と京野さん。
しかし、2025年の西馬音内盆踊りのプレミアム体験を通じ、「観客の皆様が祭りを楽しむ一方で、地域の方々は外から施設の中の様子を見ていただくことができました。実際にプレミアムな体験が提供されている光景を見たことで、『なるほど、こういうことを目指しているのか』というポジティブな理解へと徐々に変わっていった気がしています。勇気を持って行った価格設定でしたが、結果として、地域の方々にも西馬音内盆踊りの価値を再認識していただくきっかけにもなったのではないでしょうか」と語ります。

観覧を楽しんだ顧客の満足度も非常に高く、高付加価値な体験として価格以上の価値を感じていただけた、と京野さん。「通常の雑踏の中とは全く異なる、落ち着いた環境でゆっくりと観覧できたと大変喜んでいただけました。『素晴らしい祭りに食事。こんな体験ができるなら安いものだ』と言ってくださる方や、『次は高齢の親を連れてきたい』と感動して帰られる方もいらっしゃいました」と手応えを語ります。
そして、今後の展望としては、インバウンド層へのさらなるアプローチが視野に入っています。「現在、当施設の宿泊客の約15%が海外のお客様です。見たいものを見るために、ピンポイントで特定のスポットを巡る彼らのような、本物の伝統文化に強い関心を持つ層に対して、この特別な祭り観覧体験を届けていきたい。ぜひ引き続きオマツリジャパンには挑戦を支えてもらいたいです」と京野氏。他にも、祭り期間外の通年集客を見据え、地域と連携した定期公演の活用など、盆宿Uのさらなる挑戦は続いています。
歴史的建造物や地域資源を活かした観覧席の造成や、プレミアムな体験づくりをご検討の際は、ぜひオマツリジャパンにご相談ください。企画から販売まで、皆様の挑戦にしっかりと伴走いたします。