どんど焼きとは、本来小正月(1月15日)に行わる火祭り行事で、神聖な神火で邪気を浄化し、人々の1年間の災いを払い、無病息災・家内安全・子孫繁栄・商売繁盛などを願う日本の伝統的な年中行事です。役目を終えただるまや破魔矢、お札などをお焚き上げすることで、今までの効力に感謝し、その役目を無事に終えたことを神様に伝えます。
しかし、コロナ禍では密を避けるためどんど焼きの中止が相次ぎ、近年では地域の理解が得られないなどの理由により、どんど焼きが行えない自治体や町会が増えてきています。
そこでこの記事では、各地のどんど焼きのレポート記事を交えながら本来のどんど焼きの意味をご紹介し、残念ながらどんど焼きが中止になってしまった場合に、だるまや破魔矢をどう処分すべきかもお伝えします。
(この記事は2021年に公開したものを再編集しています。2024年1月15日 編集部更新)
とんど焼きに左義長…異名も多い全国各地のどんど焼き
毎年、旧正月の1月15日前後に全国各地で行われる火祭り行事は「どんど焼き」の他に、とんど焼き、どんどん焼き、どんと焼、さいと焼き、おんべ焼き、左義長(さぎちょう)、道祖神祭(どうそじんまつり)、鬼火たきなど、実に多くの異名があります。
規模や内容も、町内の人々がだるまやお札を持ち寄って焼くものから、国の重要無形民俗文化財に指定されるもの、全国から観客が訪れる火祭りになっているものまで様々。燃やすものはだるまや破魔矢、お札やお守り、熊手など役目を終えた授与品が多く、1年間守ってもらった感謝の気持ちを神様に伝えるという目的は前述のとおりです。
また、お正月のしめ飾りや門松も焼きますが、これは年末に大掃除をして各家にお迎えした歳神様が、飾りを焼いた煙にのって天上に帰るためともされています。歳神様は「歳徳神(としとくじん)」とも呼ばれますが、これがなまって「どんどん焼き」になったという説もあります。
どんど焼きの最後の方にもう一つお楽しみがある所も。おき火で焼いたお餅やみかんのお振舞いです。神火で焼いて食べることで神様のパワーをいただき、一年間風邪をひかないといわれています。東京都日野市のどんど焼きでは、お団子(まゆ玉)を焼いて食べるのだそうです。
奈良県の春日大社のどんど焼きは「大とんど」と呼ばれます。古いお札やお守り、お正月飾りなどをお焚き上げしてもらえますが、大とんどにはもう一つ大切な目的があるそうです。下記記事をぜひご覧ください。
小正月のお焚き上げや火祭りを「左義長(さぎちょう)」と呼ぶ地域もあります。語源は諸説ありますが、有名なのは平安時代の宮中行事に由来する説。当時の貴族は「毬杖(ぎっちょう)」という杖でホッケーのようにまりを打ち合って遊んだそうで、小正月に宮中の庭で青竹と毬杖3本を結び、その上に扇子や短冊などを添えて焼きその年の吉凶などを占ったのだとか。毬杖3本を結ぶことから「三毬杖(さぎちょう)」と呼ばれ、これが左義長の由来とする説です。
小正月の左義長のうち、関東で最も有名なのは「大磯の左義長」でしょう。約400年の歴史をもち、最後は男衆が海に突っ込む勇壮な祭りです。
「道祖神祭り」は道祖神信仰が盛んな長野県で多く行われていて、中でも全国的から観客が押し寄せ、かの岡本太郎も愛したのが野沢温泉の道祖神祭りです。元々は正月飾りなどを焼く行事だったようですが、江戸時代後期にはすでに盛大に行われ、現在は木材と麻縄で高さ約10メートル、幅は8メートルの巨大な「社殿」が2日がかりで作られます。
毎年1月15日の夜、火付けをする一般村民とそれを防いで社殿を守る厄年の男衆との攻防戦が、約1時間半にわたって繰り広げられた末、双方の手締めにより社殿に火が入り、23時すぎに社殿が燃え落ちて火祭りは幕を閉じます。
だるまや破魔矢、正しく処分しないとどうなる?
どんど焼きの目的や意味、全国各地で行われているどんど焼きを知っていただいたので、だるまや破魔矢、お札やお守りなどはやはりどんど焼きでお焚き上げしたいと思った方も多いのではないでしょうか。
これらは本来霊験あらたかなものですので、正しく扱えば所有者に正しい効力を発揮しますが、誤った扱いや処分をしてしまうと、効力と祟りが入れ替わってしまうとも信じられています。
また、お守りなどの効力は1年が目安といわれています。効力の切れてしまった神具や縁起物などはかえって悪い気を呼び寄せてしまう場合もあるといわれますので、適切なタイミングで適切な処分を心がけましょう。
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焼いて「煙」にすることが大切
どんど焼きで立ちのぼる「煙」には、神様に守ってもらった感謝の気持ちを天に伝える、歳神様を天上にお送りするといった役割があるとご紹介しました。他にも、仏教では炎から上がる煙に「極楽浄土への道しるべ」としての役割があるとされています。
そのためもあって、日本では古来より天に送るときに火葬を用いてきたともいわれます。古くなり効力のなくなっただるまや破魔矢を処分するときも、同様に炎を起こして煙で天にいる神様のもとへ送り返してあげることが重要だといえるでしょう。
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お寺や神社、消防団に相談してお願いしてみよう
焼いて煙にして送るのが大切ですが、冒頭でお話ししたように最近はどんど焼きの中止が増え、お焚き上げができないこともしばしばです。
また、自分で処分するにもむやみに家の庭や近所の空き地などで焼いてしまうと、お住まいの地域の条例などで禁止されている可能性もあるので、有効な手段とはいえません。
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そこで処分に困ったら、まずはご近所の神社仏閣や消防団の方々に相談してみるのがおすすめです。探していけば、どこかしらでだるまの供養や破魔矢の処分を受けてくれる所が見つかるはずです。また、先ほどご紹介したようなどんど焼きの催しやお祭りを見つけたら、持参してお焚きあげをしつつお祭りを楽しむのもよいでしょう。
特にだるまはモデルになった達磨大師が高名なお坊さんです。そのため、お寺に供養をお願いするのが処分方法としては最適かもしれません。