待ちに待った8月!夏も深まり、全国各地で「4年ぶり」のお祭りが再開される中、今や高知だけに留まらず、日本全国・世界で楽しまれている「よさこい祭り」も通常開催される予定です。
さらに今年は「4年ぶり」だけでなく、記念すべき70回目の節目となるよさこい祭り。祭りとしても13年ぶりに新たな演舞場が追加(高知大学演舞場)され、例年よりも広いエリアで、演舞を楽しむことが可能です。
そんなよさこい祭りが始まったのは、今から約70年前の1954年。第一回目の出場チームは21団体で踊り子は750人との記録が残っておりますが、今回取材をしたのは、そんな貴重な21団体のうちの一つである『帯屋町筋』。「伝統と挑戦」を合言葉に、第1回目から連続出場し続けている老舗商店街チームが語る、よさこい祭りの未来とは。
目次
地方車に乗っていた父の背中。帯屋町筋隊長・楠瀬さんが語るよさこいの原風景
70回続く歴史がありながら、時には激しく艶やかに、ユーモアを交えたよさこいを繰り広げ続けているよさこい老舗商店街チーム『帯屋町筋』。「一度は帯筋(帯屋町筋の通称)で踊ってみたい!」という声も多く、チームメンバー150人の内、約3分の1の方が県外のお踊り子さんで構成されているのだとか。
今回お話を伺ったのは、『帯屋町筋』で隊長を務める楠瀬昭一さん。チーム名の由来にもなった『帯屋町筋商店街』に代々受け継いできたお店があり、協同組合帯屋町筋の青年会長でもあります。
ーーー楠瀬さんとよさこい祭りとの出会いを教えてください。
父の店が商店街にあったので、物心ついたときからよさこいがありましたね。特に地方車に乗っていた父の姿は僕の憧れで、子供心ながら「いつか自分もよさこいに関わりたい」と思っていました。
ーーー楠瀬さんが、はじめてよさこいに参加されたのはいつだったんですか?
小学校の3、4年生ぐらいの頃でしたね。当時のよさこいは、今ほどアレンジが盛んではなかったので、よさこいの基礎である『正調』をベースにした踊りでした。年上のお兄さんお姉さんたちと一緒に踊れることが、大人の世界に足を踏み入れたようで、すごく嬉しかったことを覚えています。
70年紡いできた「伝統」と「挑戦」の中に隠された、商店街チームだからこその想い
中学校進学を境に一度よさこい祭りへの参加が途絶えてしまうものの、大学で県外に出た後も、毎年のようによさこいを見に帰ってきていたという楠瀬さん。高知に帰ってきてからは父の後を追って青年部に所属をし、いよいよチーム運営の世界へ飛び込んでいきます。楠瀬さんが帯屋町筋に携わる中で感じてきた、よさこい祭りの変化について伺いました。
ーーー『帯屋町筋』のコンセプトに「伝統」だけでなく「挑戦」が入っているのがとても素敵だなと思っているのですが、楠瀬さんが思う帯屋町筋の個性はなんだと思いますか?
今でこそクラブチームや企業チームが増えてきていますが、当初は商店街からの参加チームが多かった。だからこそ、それぞれの商店街チームが「いかに目立てるか」という想いでぶつかり、競い合ってきたのがよさこいで、それが帯筋の個性でもあるかなと思っています。
ーーー帯筋さんの挑戦の個性は、目立ちたいから来てると…!
目立ちたいからこそ、アイデアが出てくるというか(笑)。今でこそ、よさこい祭りに関するいろんなルールがありますが、昔は規制も少なくてアイデアが反映されやすかったんですよ。一番有名な帯筋のエピソードが、地方車に20tの大型トレーラーを使用したこと。まだ人数規定もなかったので、踊り子も総勢300人以上になってしまって、その後トレーラーの使用が禁止になったそうです(笑)。
ーーー新聞で見たことあります!すごい大きさのトレーラーが印象的でした(笑)
20tトラックの時代は、まだ20回大会ぐらいの時なので僕が生まれるより前の話なんですが、それらの根本にあるのが「何をやったらおもしろいか?」だと思うんですよね。あとは僕たちが『商店街チーム』だからこそ、挑戦し続ける土壌があったのかなって。
ーーー「商店街チームだからこそ」ですか。
今もそうですが、僕たちのチームは商店街関係者だけでなく、商店街を利用してくれているお客さんも一緒に構成されています。だからこそ、「まずは自分たちが楽しむことで、商店街を活気づけたい」っていう想いがあるんですよね。その想いが根本にあるからこそ、伝統という枠だけに捉われすぎず、時代にあわせた僕らなりの楽しさを、挑戦を通じて追求してきたんだと思います。
ズバリ聞く!『帯屋町筋』の2023年度の演舞テーマと見どころは?
よさこい祭りだけにとどまらず、全国各地のイベントや有名アーティストのライブでのパフォーマンスなどにも出演し、よさこい祭りの愛されポジションを確立しつづける『帯屋町筋』。注目すべき、第70回よさこい祭りでの演目テーマについて伺いました。
ーーー今年のテーマを教えていただけますか?
『よさこいだョ!全員集合』です!
ーーーさすが帯筋さん!テーマから温度感が伝わってきます!
あえて「帯筋だョ!全員集合」にしなかったことにこだわりがあって、70回目のよさこいを「帯筋の人」だけでなく、「全ての人で盛り上げていきましょう!」という意味を込めたんです。
ーーー過去には『たぬき』に粉してみたり、幸福を招くという人形の『福助』に粉してみたり、帯筋さんがつくりだす世界がたまらなく好きなんですが、そんな帯筋さんがつくる今年の演舞、ずばり見どころを教えてください!
今年は一体感が出るように、大きな振りが一気に動くのが見どころだと思います。今年はテーマのわりには複雑なステップがあったり、テンポが早くて。色んな年代の踊り子がヒーヒー言いながら練習に励んでいます(笑)。是非その練習姿も想像しながら、応援いただけたら嬉しいです。
存続の秘訣は街への想い!?楠瀬さんが思うよさこいの未来
よさこいチームの担い手である帯屋町筋青年部は、メンバーの入れ替わりがありながらも、同世代の仲間たちに恵まれたことで、楽しみながら進み続けることができたと楠瀬さんは話します。帯屋町筋と共によさこいを見守ってきた楠瀬さんが考える、よさこいの未来について伺いました。
ーーー帯筋さんはよさこい祭りと共に歴史を歩んでこられましたが、長年チームが存続し続けてきた秘訣があれば教えてください。
これは先輩方も含めてのことなので一概には言えないですが、僕は街があるからこそ、よさこいがあると思っています。街が好きな人たちが町を良くしようと行動した結果がよさこいであり、チームなんだろうなって。
ーーーなるほど、続けようとしたのではなくて、目の前のことを想って行動してきた結果存続に繋がったということなんですね。最後に楠瀬さんが思う、よさこいの未来について教えてください。
よさこいの魅力は、変化が当たり前だというところ。自由なお祭りだからこそ、自分たちがやりたいことを叶えられる場所でもあると思うのです。よさこいの未来を考えるのではなく、僕たちが「目立ちたい」「楽しみたい」と進んできたように、みなさんが想い想いに楽しんでみる。その延長に、100年続くよさこいの未来があるんじゃないかなと思います。
第70回よさこい祭りは8月10日11日に開催。全国に広がり続けるよさこいの魅力を是非生で!
伝統を重んじながらも、「まずは自分たちが楽しむ」という気持ちと共に挑戦し続ける帯屋町筋さんの演舞が見れるよさこい祭りは、8月10日11日に開催。高知城や高知駅といった場所も含めた高知市内17会場で、踊り子たちの熱気を味わえます。また同月の9日には前夜祭が行われ、同月12日には後夜祭と全国大会が開催されます。
第1回目から連続出場しつづけているチームを生で体感することで、70年受け継がれてきたよさこいへの想いを肌で感じて見るのはいかがでしょうか?是非高知に足を運んでみてくださいね。