毎年、夏を迎えると話題にのぼる“土用の丑の日”。昔から続く、日本中の人が鰻を食べる一大イベントでもあります。しかしなぜ土用の丑の日に鰻を食べるのか、みなさんは理由をご存知ですか?そもそも“土用の丑の日”とはどんな習慣なのでしょうか?“土用”って?“丑”って?
本記事ではそれら、土用の丑の日についての疑問をまとめて解説。また鰻のおいしい食べ方についてもご紹介します!!
(この記事は2021年6月に公開されたものを一部再編集しています。2023年7月11日編集部更新)
目次
300年以上影響のある広告!?平賀源内「本日土用丑の日」
“土用の丑の日”に鰻を食べる、という風習の由来は諸説ありますが、基本的には江戸時代ごろに広まった習慣とされています。
最も有力な説として知られているのが、“エレキテル”などを発明した江戸時代の発明家・平賀源内と関係がある、といった説。平賀源内には鰻屋を営んでいる知人がおり、「夏に鰻が売れない」といった相談を持ち掛けられました。これに対し、平賀源内は店先に「本日丑の日」と書いた紙の掲示を勧め、結果、知人の鰻屋は大繁盛。それを見た江戸中の鰻屋も同様の広告手段をとったため、土用の丑の日に鰻を食べる習慣が急速に広まっていった、というものです。
現代において一部地域では年中行事として扱われており、千葉の成田では毎年一か月間、名物の鰻を味わう「成田うなぎ祭り」が行われています。
また土用の丑の日に食された鰻の魂を供養するため、“うなぎ供養祭”という行事が存在。毎年お盆の期間周辺に浜名湖などで行われています。
平賀源内説は、土用の丑の日の由来として広く知られている知識。ほかにも様々な説がありますが、どの説にも決定的な証拠がないため、平賀源内説が通説として扱われているのです。
もともと土用の丑の日には、うし(牛)や、うどん、うめぼし(梅干し)など、“う”のつく食べものを食べるといった習慣がありました。元来の風習が土台となって平賀源内発案の、“土用の丑の日”に鰻(うなぎ)食べる行為が受け入れられやすかった、といわれています。
また土用の丑の日の時期は夏であり、本来は鰻の旬ではありません。知人が困っていたのは、そのためではないか? といった考察もされています。
ほかにも江戸時代当時の栄養状況から考えると、鰻は夏バテに有効なビタミンAや鉄分を摂取できる貴重な食材だった、とされています。しかし現代では食材全体の栄養価が向上したため江戸時代ほどの効果は期待でません。鰻の個体数も減少してしまっているため、似た食材のナマズやアナゴなどが食される場合もあります。
“土用の丑の日”とはそもそもどんな行事なの?
平賀源内が広めたとされる、土用の丑の日に鰻を食べる習慣。では土用の丑の日とは、本来どんな風習だったのでしょうか?
“土用の丑の日”、という語は“土用”期間中の“丑の日”を意味します。“土用”とは立春・立夏・立秋・立冬、それぞれの節句の前に存在する、それぞれの季節の中間18日間の雑節のこと。節句の直前には寒さや暑さが極まるため、直前の土用の期間には、体調に注意が必要とされていました。
つづく、“丑の日”とは、日付を12支に対応させた、子から始まり亥で終わる12日の2日目を指します。
これらの考え方は、中国の五行陰陽説に由来。五行陰陽説には、木・火・秋・水・土の5つの属性があり、五行の属性はそれぞれに相性があり影響を与えバランスを保つ、と考えられていました。
古代に日本人は五行の属性も季節・日にち、それぞれに対応させます。木は春、火は夏、金は秋、水は冬。そして雑節の18日間は土の属性が割り振られていました。日にちも同様に属性が割り振られ、丑には水が対応。
しかしなかには、季節・日にちの相性が悪い、不吉な日が存在。いくつかある組合せの悪い日の中でも特に悪いのが、“土用の丑の日”だったのです。
そのため、災いや病など不吉な気を払おうと“土用の丑の日”には、丑(うし)の“う”のつく、うどんや牛肉などの食物を食べる、といった習慣が行われていました。特に夏場は体調を崩しやすく一層注意を払わなければならないため、現代まで続くひときわ大きな風習となったのです。
土用の丑の日、2023年はいつ?
2023年の土用の丑の日は7月30日(日)です。土用の期間・18日を、12支に当てはめるため、夏の“土用の丑の日”が2回ある年もあります。
関東風・関西風 ひつまぶし など 鰻のおいしい食べ方についてご紹介!
平賀源内のよって広まったとされる、土用の丑の日に鰻を食べる習慣。現代まで多くの世代を経て語り継がれ、様々な鰻の食べ方が考案されてきました。
まずは鰻の開き方。東西によって違いがあり、関東で広く用いられている焼き方は“背開き”といいう、鰻の背を開いて焼く方法。江戸には侍が多かったため腹を開いて焼く過程が切腹をイメージさせ、縁起が悪かったことが理由とされています。また当時の江戸は、急激に外食産業が発達していましたが、熟練した料理人の数は限られていました。そのため、ある程度の料理人なら比較的に簡単に調理でき、焼く際に脂を逃がさない“背開き”が好まれた、ともいわれています。
対して関西では腹を割って話す、という独特の雰囲気から腹開きが用いられてきました。こちらは商人が多い、関西ならではの独特な考え方ですね。
調理方法にも東西で違いがあります。江戸は素早い提供のため、事前に蒸してから焼くといった方法を使用。水分が多いため、ふっくらとした鰻が楽しめます。関西では直接火にかけ、ご飯の中に鰻を入れることで蒸し上げる、といった方法を採用。関西風はパリッとジューシーな仕上がりとなります。またご飯の中で蒸すことから、“まんまむし”、転じて“まむし”と呼ばれるようになっていきました。
また関東・や関西だけでなく、独自の食文化が発展している名古屋にも、“ひつまぶし”という鰻料理が存在しています。
土用の丑の日、地域別の風習は?うなぎは関東風と関西風でどう違う?
ひつまぶしとは通常の鰻ご飯のほかに、ワサビ・海苔・出汁などが一緒に提供され、食べていく過程で様々な味が楽しめる料理。いわゆる“名古屋めし”として知られ、一度の食事でたくさんの料理を食べたかのような満足感が特徴です。
牛丼屋やコンビニでも!気軽に食べられるうなぎも人気!
全国的にうなぎがよく食べられるこの日に合わせて各牛丼チェーンもうなぎを商戦に投入しています。うなぎ屋よりも安価ですが、食べてみるとなかなか本格的でコスパも◎です。
節約志向でもうなぎを味わいたい方はぜひお試しを。
全国のコンビニでもうなぎ商戦が活況!リーズナブルなものから本格的な国産うなぎまで、特徴も様々です。近所のお店で手にとってみてくださいね。
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うなぎ×お祭り で楽しむことも!?
うなぎと祭りが盛んな土地も日本各地に!そんな土地に赴いたら、ついつい財布の紐が緩んでしまいますよね。
例えば、成田祇園祭で有名な千葉県成田市。
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さらに、こちらの記事では日本各地のお祭りでうなぎを楽しんだ記録をご紹介!あなたの地元の祭りはありますか?
お祭りあるところは鰻も有名!?お祭りに合わせて食べた鰻をまとめて紹介
うなぎが盛んな土地では「うなぎ祭り」なども開催されていますので、美味しいうなぎ目当てで足を向けるのも楽しみの一つではないでしょうか。
まとめ
土用の丑の日の由来や地方別の鰻の食べ方について、いかがでしたでしょうか?
もともとは“う”の食物を食べる行事が、平賀源内のたった一つの広告で鰻を食べる文化になったのだとしたら……なんだかワクワクが止まりませんね。